第9章 歪想 (羽宮一虎 / 場地圭介)
「電話終わった?」
『うん、遮ってごめんね。
お話の続きしよう圭介くん。』
「いや…いい。なんでもねぇ。」
コイツが誰かのものになっちまうなら今ここで奪ってやろうかなんて思ったけど…この関係が崩れるのはやっぱり怖い。一緒に登下校できなくなるかもしんねぇし、もう話せなくなるかもしれねえ。
こうやって腕の中に閉じ込めることができなくなるのなら俺はまだ幼馴染のままでいい…。
『ほんとになんでもない?
なんでもないのに甘えん坊さんの日?』
「え?」
『圭介くん寂しいといつも甘えてくるから。
違った…かな?私でよければそばにいるよ。』
「はは…っ。
そんなキャラじゃねんだけどな。」
『カズくんのお見舞い行ったら圭介くんのお家いこ。今日は泊まってもいい?』
「お前がいいなら…。」
『じゃあ決まりね!』
泊まり、という言葉に心臓がドクドク脈を打つ。
「んじゃ一虎んとこ行って帰ろうぜ。」
抱きしめていた彼女を解放して立ち上がる。一虎の家までの道中、コンビニに寄って頼まれたものを買って行く。
『ココアでいいかなー?』
「いんじゃねぇの。」
『じゃあココアにする!
あとゼリーとかも一応買っとこうかな。
あとこれと…これ…と。』
頼まれたもの以外にもいくつか買って一虎の家に向かうと、ベッドの上で漫画を読んでいた。
「んだよお前元気なんじゃねえかよ」
「はー?元気じゃねえよ頭いてえんだよ」
『まだ痛い?お薬効かなかった…?』
心配そうに一虎の顔を覗き込んでおでこに手を当てる。
『熱はない…ね。良かった。』
「朝より全然マシだから平気だよ。
クスリさんきゅーな、だいぶ効いたわ」
なんだその締りのねぇ顔はよ。
俺に対する態度と違いすぎんだろ。
『ほんと?』
「ほんとだっつの。
それより袋ん中何入ってんの」
『ココアとかゼリーとか買ってきたよ。
ココア今飲む?入れてこようか?』
「おう、頼む」
『待っててね!』
パタパタと部屋を出てココアを入れに行った。部屋には俺と一虎の2人。
「使わねぇ頭使って頭痛か?」
「…うるせぇよ」
まあそんなこったろーと思ったけどよ。