第9章 歪想 (羽宮一虎 / 場地圭介)
夢の中で場地の声がする。
なんか怒ってんなぁ。
「っおいてめぇ起きろや…」
『ほら圭介くんが怒っちゃうよー?』
あれ…の声だ。
「クソ…おい一虎ァ…っ!」
場地はまだ怒ってんなあ。
『こらこら圭介くん本当に怒んないの』
いつでも優しいなコイツは。
「甘やかすなよコイツ卒業できねぇぞ」
あーそうだ俺出席数足りてねんだわ。
『それは困るけどさあ…』
俺の寝ているすぐ横からの声がする。優しく頬をつついたり、前髪に触れる細い指。そういや今日からたまに起こしに来てくれるんだっけか…。
『カズくん…起きよう?
起きないと一緒に卒業できないよ?』
「ん…」
クッソねみぃ…。
『カズくん…?』
「ンん……マジで来てくれたの…」
まだ薄らにしか開かないまぶたの隙間からが見える。わざわざ早く起きて来てくれるなんて最高の幼馴染じゃねぇの。つい最近抱いた幼馴染が健気に起こしに来てくれるなんて急に愛おしくなって伸ばした手でを捕まえた。
『よしよし、ほら起きようね』
俺の頭を撫でるを甘えるように抱き寄せて
「…今日は シよう な。」
引き寄せた耳元に囁くように声を送る
『な…ば、ばかっ!』
アタフタとしてあっという間に紅く染まる耳。お前にしか聞こえてねーっつの笑
「…起きたかよ」
「はよ、場地」
「あんまをからかって遊ぶんじゃねえぞ」
「はーいはい、顔洗ってくるわ」
場地は昔っからのことになると過保護っつーかなんつーかなぁ。ちょっとにイタズラしようもんならいっつも場地が飛んできて俺が怒られるんだよなー。
顔を洗って髪を整えて制服を着て。
今日は珍しく3人揃って朝から登校。
前を歩く2人を見ると、あたりまえのように場地がの荷物を持っている。こういうのも昔から変わってねーなぁ。
教室の前でに荷物を返して頭をポン、と撫でている。そんな優しい目とかできちゃうんだ場地って…なーんかなあ。