第9章 歪想 (羽宮一虎 / 場地圭介)
「…そろそろ時間」
『んぅ…も、すこしぃ…スー』
俺に抱きついたままムニャムニャとまだ夢の中にいる。こんだけ気持ちよさそうに寝てるやつを起こすのは少し気が引けるが、そろそろ起きねえとほんとに遅刻しちまう。
「起きろー?」
『けいすけくん…あったかくて気持ちぃ。』
「だからあったけぇのはお前だっつーの。
起きねぇと一虎んとこ行けなくなるぞ」
すりすりと俺のシャツに頬をすり寄せてゆっくりと瞼を開く。
『ん…おはよ、圭介くん…』
「はよ。目ぇ覚めたか?」
『んーん。まだ…でも起きる。』
するりとベッドを抜け、まだ覚束無い足取りで顔を洗いに部屋を出ていく。暫くして戻ってきたがプチプチとパジャマのボタンを外していく。
「お、い!俺いるんだぞ…っ」
慌ててうしろを向くと焦ったの声が聞こえてきた。
『ご、ごめん圭介くんっ!
まだ…その、ちょっと寝ぼけてたみたい!
そのままうしろ向いててくれると助かる…』
「お、おう…。」
朝の静かな部屋にの着替える音だけが聞こえる。昔は一緒に風呂だって入ってた…だけどそんなん所詮は昔だ。
『ふぅ…おまたせっ』
もういいよ、と言う声に振り返ると見慣れた制服姿の彼女がいた。
「化粧は?」
『今からする!ちょっと待っててね…っ』
机についてる大きめの鏡の電気を付けて顔にクリームを塗ったり眉毛を整えたりしている。気持ち程度しか化粧をしないこいつは10分そこらで化粧を終えて今度は前髪にアイロンを当てはじめた。
『よし…完成です。お待たせ!
朝ごはん食べてカズくんのお家行こ!』
の母ちゃんが俺の分も用意してくれたらしく、リビングへと手を引かれるままついて行く。
「アンタやっと起きたの?
ごめんね圭介くんこの子寝起き悪くて〜」
「慣れてるから全然。
それより朝飯あざす。」
「いいのよそんくらい!
アンタほんと圭介くんに感謝しなさいよー?」
『わーかってるって!お母さん!
早くしないと遅刻しちゃうの!!』
「ゆっくり食べなさい!
喉詰まらせるわよっ」
『だって遅刻…「だってじゃない!」』
それなら早く起きなさい、と怒るの母ちゃん。俺の母ちゃんもだけどキレると怖ぇんだよなあ。