第9章 歪想 (羽宮一虎 / 場地圭介)
次の日の朝。
いつもよりだいぶ早く起きての家に向かう。女が支度にどんくらいかかるか分かんねぇから一応な。
インターホンを押すと案の定出てきたのはの母ちゃん。
「まだ寝てるのよー。
部屋上がっちゃっていいから起こしてあげて」
「うす、お邪魔します」
何度も来たことのあるの部屋へノックもなしに入る。どうせ寝てるなら聞くだけ無駄だろうし。
「おーい起こしに来たぞー。」
『スー…スー…』
ベッドの下に腰を下ろして、気持ちよさそうに眠るの寝顔を眺める。顔にかかった髪を耳に掛けてやるとゆっくりと瞼が開いた。
『ん…圭介くんだぁ。おはよう…』
「はよ、。
一虎迎えいくんだろ?起きれっか?」
眠たそうな声で俺を呼んでふにゃりと微笑んだ。
『ぅん…、まだ少し時間あるから寝たい…。圭介くんも一緒に寝る?』
布団の中から伸びてきた寝起きの温かい手が俺の手を握る。そのまま優しくクイっと引っ張られてベッドへ上がるよう促される。
「おい、お前メイクとかすんだろ?」
『うん…けどまだ…へーき。
圭介くん来るの早すぎるんだもん…。私が起きようと思ってた時間より30分も早いよ…ふふっ』
「え、そんなにか?わりぃ…支度どんくらいかかるか分かんなくてよォ。」
『ううん?来てくれてありがと。
でももう少し寝たいから付き合って…ね?』
「…ぁあ。」
好きな女からあと少し眠るのに付き合ってくれと言われて断る男なんかこの世に存在しねぇ。誘われるままベッドに上がって隣に横たわった。
『ジャケットしわになるよ…脱がないの?』
「そ…うだな。脱いどくわ。」
脱いだジャケットを適当に床に置いて隣で眠たそうにしているに視線を戻すと、スルりと伸びてきた腕が俺を抱きしめた。
『圭介くんあったかい。』
「いやお前のがあったけぇよ…。」
『んー…』
寝ぼけなまこなに腕枕をして頭を撫でてやるとすぐに寝息が聞こえてきた。
「警戒心なさすぎか…。」
まるで意識されてないことを再確認させられたみたいで胸が少し痛む。それでも隣にいられるなら俺はまだこの関係でいたいと願う。