第9章 歪想 (羽宮一虎 / 場地圭介)
『何も聞かずにそばにいてくれて、抱きしめてくれてありがとう。圭介くんといると安心する…どこにもいかないで。』
俺のシャツを掴んでいた手が背中に回る。
どこにも行かないで欲しいのは俺も同じだ。もしお前に好きな男ができたら?彼氏ができたら?俺の役目は全部ソイツにもってかれんのか?
俺はな、お前が好きだよ。
ずっと前からお前が好きだ。
幼馴染って立場利用してそばにいるけど、いつか来るかもしれない俺の役目が終わるその日が怖い。
「どこもいかねぇよ…。
もう心配させるようなことしねぇから泣くな。」
これは俺が自分の腹を刺した時に約束したこと。目を覚ました時、コイツが馬鹿みてぇに泣くから約束したんだ。もう心配させねぇ、そばにいるって。
お前が思うどこにもいかないで、と俺の思うどこにもいかないで欲しいはきっと意味が違うから。だから今はこれでいい。
『…急に泣いたりしてごめんね。
シャツも…濡れちゃったし。』
「んな事気にすんなや。
ほら、帰んぞ。」
『うん。』
「明日の朝は一虎起こしに行くんだろ?
なら少し早く起きねぇとな。」
『そうだね、早く起きなきゃ。
私起きれるかな…』
一虎ほどじゃねぇがも朝が弱い。毎朝メイクをして前髪を巻く余裕がある事に驚くほどだ。
「起こしにいってやろーか?」
『甘えちゃおうかなあ』
「お前メイクとかすんだろ?
まあまあ早く行くから待っとけー」
『うん!ありがとう!』
の家まで着いて、また明日と言ってわかれる。ここんとこ補習やら、昨日はが一虎んちに忘れ物したやらで一緒に帰れてなかった。
それに最近一虎のに対する距離感がおかしい気がする。俺の気にしすぎかもしれないが…。女と遊んでる感じもしねぇしなんか引っかかる。