第9章 歪想 (羽宮一虎 / 場地圭介)
放課後を告げるチャイムがなって皆バラバラと帰り始める。
「羽宮ー」
「はーい」
「この後ちゃんと来いよー」
「うーす」
先生に呼び出されているカズくんを除いて。
『それじゃあまた明日ねカズくん』
「おう、またな」
先生が出ていった教室には私とカズくんの2人。
『明日の朝はお迎え行くから』
「頼むわ」
『きゃっ』
ぐいっと腕を引かれてカズくんの胸におさまる
「今日は俺とできねぇけど1人ですんなよ?」
私の耳元に唇を寄せて囁く。腰に回された腕がスルスルと太腿を撫でて身体が疼くのが分かる。
『ひ…ひとりでなんてしないよ…っ』
「ひとりでシたことねぇの?
今度教えてやらねぇとなあ…?」
ガラガラッ
扉の開く音に身体が固まる。
「は…?」
『…っ圭介くん?』
「何してんのお前ら…」
「別に何も?こいつが体調わりぃっていうから支えてただけ。な?。(俺に話合わせろ)」
私にしか聞こえない声で話を合わせろというカズくん。
『あ…っうん。そうなの。
昨日あんまり眠れなくて…目眩が、ね。
ありがとうカズくん。』
「大丈夫なのか?」
心配そうな圭介くんに胸が痛む。
『うん…もう平気だよ!
帰ろう圭介くん!』
「あぁ。またな一虎。」
「じゃーなー」
手を振って教室を出てから振り返ると
( バ レ る ぞ )
と、口パクで言われる。
圭介くんに嘘をついてしまったことが苦しい。だけど話せない。バレたら今の関係が変わってしまうかもれないから。それなら隠し通したいと思う私はずるいのかな…。
「?」
『…っな、なに?』
「まじで平気か?」
『だ、大丈夫!ごめんね…』
「なに謝ってんだよ、ほら。」
そう言って朝と同様に荷物を持ってくれる
『自分で持つよ…?』
「体調わりぃんだろ」
『さっき目眩がしただけでもう…平気。』
ツキっと胸が痛む。嘘をつくって…苦しい。
「無理すんなよな」
『うん…ありがとう』
「なあ」
『なに?』
「一虎となんかあったか?」
『え…っど、どうして?』
「なんとなく?勘。
お前昨日からなんか変だし」
『そ…うかな。』
圭介くんに隠すのなんて無理だよ。
小さな変化にすぐ気がつける人だから。
だけど今はまだ…知られたくない…っ。