第9章 歪想 (羽宮一虎 / 場地圭介)
カズくんは約束通り私をバイクのうしろに乗せて家まで送ってくれた。
『送ってくれてありがとう』
「どーいたしまして」
『気をつけて帰ってね』
「おう、また明日な」
再びバイクを走らせて帰っていくカズくの背中を見送った。
『ただいま〜』
「おかえりー。
あ、さっき圭介くんが来たけど一緒に帰ってこないなんて珍しいわね?」
『え、圭介くん?
今日はカズくんの家に忘れ物取りに行ってて…って圭介くんも途中まで一緒だったから知ってるはずなのに。』
「急ぎの用事じゃないからって帰ったけど」
『そっか、明日聞いてみるね』
特に連絡も来てないし…。
ほんとに急ぎの用事ではないのかも。
明日の朝会ったら直ぐに聞こう。
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「ー!準備できてんのー??
圭介くん来たわよー!!」
『はーい!今行くー!』
翌朝、いつも通り迎えに来てくれた圭介くん。
『おはよう圭介くんっ』
「はよ、行くぞー」
サラッと私の荷物を持って前を歩く。
『いつも持ってくれてありがとう…っ』
「お前ちっこいし細いし荷物なんて持てねぇだろ」
『持てますー!もうっ』
「ははっ、うそうそ。」
そういえば圭介くんに聞くことが…
『ねぇ圭介くん』
「ん?」
『昨日何か私に用事あった?
お母さんから圭介くんが来たって聞いて』
「あー…いや、特になんでもねぇよ」
『そう?でもなんかあったんでしょ?』
「いや、ほんとになんでもねぇんだ」
『そっか、それなら…いいけど』
何もないと言いながらいつもは合わせてくれる目を逸らされてしまった。それがなんだか寂しくて、前を歩く圭介くんの顔をのぞき込む。
「…っなんだよ」
『ううん別に…えっと。
圭介くんが目逸らすから寂しくて。』
「わり、そんなつもりじゃ…」
『もうしないでね?』
なんて言ってみたりする。
「…わーったよ。
てかお前急に前出てくんのやめろよな」
『びっくりした??』
「したからやめろってんの」
『はあい』
「返事伸ばすんじゃねぇ」
『はいっ』
「それだ」
『元隊長さんは厳しいなあ』
「うるせ、このっ」
ペちん、と優しく手の甲で私の頭を叩く圭介くん。こんなやり取りが心地いい。