第9章 歪想 (羽宮一虎 / 場地圭介)
なにか会話…なんか普通の話。
『け、圭介くん今日は一緒に帰れる?』
「あーわりぃ今日も補習だわ」
『そっか。頑張ってね』
「んじゃ今日も2人で帰るか」
『女の子と約束ないの?』
一緒に帰ってやっぱ約束ありましたって巻き込まれるのだけは御免だよ。
「おいおい俺だって毎日じゃねぇよ
体もたねーわ。どんな絶倫だと思われてんだよ」
『ちょっとそこまで聞いてない!』
「あー?何照れてんだ小学生かよ」
「おい一虎、あんまをからかうな」
「場地も過保護かよ」
『…圭介くんは遊んだりしない…の?』
ただの疑問。なんとなく気になった。男はみんなシたいんだよ、と前にカズくんが言ってた。でも圭介くんはそんな素振り全く見せないから。
「俺は別にそういうのいいや」
「お前ほんとに男かよ」
「好きなヤツじゃなきゃ意味無くね」
「乙女かよ」
『そっか。なんか安心した』
「ねぇ俺ディスられてる?」
『カズくんはあんま女の子泣かせたらダメだよ』
「分かってるってのー」
本当に分かってるのかなあ…。
さっきも先輩泣いてたじゃない。
「ねぇ羽宮くん」
「んあ?」
声をかけてきたのは圭介くんのクラスの女の子。付き添いの友達に連れてこられたらしい その子は声を震わせながらカズくんの名前を呼ぶ。少し目が赤い気がする。泣いた後なのだろうか。
「放課後ちょっとだけいいかな。」
「俺今日先約あんだけど」
「…また、別の子…?」
「いや別っつーか、こいつと」
そう言って私の肩を抱いたカズくん
「…いつも一緒にご飯食べてるよね。」
「俺が誰と飯食おうがお前に関係なくね?」
「そ…だけど。」
「ちょっと羽宮さあ!
言い方ってもんがあるでしょ!?」
付き添いの子が声を荒らげた。
とてつもなく気まずい空気。
巻き込まれるのだけは嫌なのに…!
『私のことは気にしなくていいよ。
別に1人でも帰れるし。』
「なんで?一緒に帰ろうぜ
少しだけっつってるし待ってて?」
『あー…うん』
すると音を立ててダン!っと机がズレた。
犯人は圭介くん。蹴ったのだ。