第9章 歪想 (羽宮一虎 / 場地圭介)
最後の一口を頬張った彼女が俺を見つめて
『ごめんカズくん。今日は帰るね。』
「は?ちょっと答えは?」
『やっぱ無理だよ。
カズくんとそういう関係…。』
「そ。」
『うん、じゃあまた明日学校でね』
「おう」
こんなことなら今日遊ぶはずだったあの女を抱いときゃ良かったか?
携帯を手に取って適当な女に連絡をいれる。すぐに返ってくるメール。何も持たずに女の家に向かって抜いて帰る。その繰り返し。なるべく後腐れのない女を選んでるつもりだ。けど中には1度寝たくらいで彼女ヅラをするやつもいて面倒くせぇ。
こんなんいつまで続けんだろうな。
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side夢主
いつものように迎えた朝。
よし、今日も起きられた。
薄くメイクをして前髪をふんわりと巻く。
今日はいつもと少しだけ変えてみようかな。
高校生になってから少しだけメイクをするようになった。髪をセットするようになった。よく似合っていると圭介くんが褒めてくれたのが嬉しくて毎朝少しだけ早く起きている。
それから朝ご飯を食べてバタバタと支度をしていると
「ー、圭介くん来たわよ」
『今行く!』
毎朝迎えにきてくれる圭介くん。
『おはよう圭介くん!
お待たせしましたっ』
「おはよ、…今日なんか違ぇな」
『気がつくのさすがだね』
「リップだろ。いつもと色が違ぇ
似合ってんじゃねーの。」
『えへへ、よく分かったね』
「毎日一緒にいんだからそんくらい分かるわ」
『そうかな?カズくんはきっと気づかないよ』
「あーあいつはそうかもな」
他愛のないいつも通りの会話が心地いい。そばにいてくれることを当たり前だと思いたい。2年前、カズくんが圭介くんを刺したと聞いたときは目の前が真っ白になった。今でもたまに不安になる。急にいなくなってしまったらどうしよう、と。
「おい」
『…ん?』
「余計なこと考えてたろ。
居なくなんねぇから んな顔すんなよ」
『圭介くんはなんでもお見通しだね』
「幼馴染なめんなよー」
そう言ってさらっと私の手からカバンを奪って、教室まで持ってくれる圭介くん。