第8章 トライアングル (三ツ谷隆 柴八戒)
「ねえ、はやくしてよ
それともなに…嘘なの?」
『…っ人前でなんて…したこと、ないから』
俺はキスをしたことがねんだよ…。
「あっそ、はやくして」
こんな状況嬉しくなんかねえ。
けど心臓はドクドクと音を立てる。
「ごめん…するよ?」
『ん、うん。』
彼女の頬に手を添えて顔を近づける。ぎゅうっと瞑った大きな瞳の端からは涙がこぼれ落ちた。
口元を手で隠しながら口の横に触れるか触れないかまで近づき離れる。アイツにはキスしてるように見えただろうか。
パッとタカちゃんを見ると怒りとも悲しみともとれないような表情をしていて、本当にしたわけではないけど胸が痛んだ。
「ねえ、舐めてんの?」
『…っえ?』
「そんな子供みたいなキスいらない
舌くらい入れてくれないと〜?」
だからしたことねぇんだって…!
コイツ面白がってるんだ。
「もういいだろ!!」
「タカちゃん…?」
「もうやめてくれ…が好きだ…っ
たとえ八戒のもんだとしても見てらんねんだよ…」
『…三ツ谷くん』
「三ツ谷?何言ってるの?
あの子は八戒くんのモノなんだよ?
だからね、三ツ谷は私の 「黙れ。」」
「えっ?三ツ谷?」
ベラベラと喋る女の言葉を遮って睨みつけるタカちゃん。殺気まで感じるほどにイラついている。
「もしが八戒の女だとしても、お前がどんなに喚こうと…俺の心はのもんだ。分かったらとっとと失せろ…。」
「やだよ三ツ谷っ!
私と…私と付き合って?ね??」
「失せろって言ったはずだ…二度と口聞けねえようになりたくなきゃ今すぐ俺の前から消えてくれ。俺がお前を想うことは一生ねえ。」
肩を震わしながら涙を流し始めた女に目もくれず、苦しそうに起き上がったタカちゃんが自分の上から女を退けてこちらへよろよろと歩いてくる。
「タカちゃん…っ大丈夫!?
身体…すげぇ熱いよ。」
かなりの量の媚薬を飲まされてタカちゃんの身体はきっと限界なはず。俺が触れても時折ピクリと反応するほどだ。それなのにあの女には1ミリも反応を見せなかったんだから相当気を張ってたに違いねぇ。