第8章 トライアングル (三ツ谷隆 柴八戒)
『…っみつ、やくん…?』
「…っこれは」
分かってる分かってるけど苦しいの。
三ツ谷くんは悪くない。仕方の無いこと。
「あなた八戒くんの彼女なんでしょ?
どうして三ツ谷のこと気にするの?」
「あぁ、は俺の彼女だよ。
だからコイツは関係ねえ。」
「ふーん、いいよ信じてあげても。
でも条件が一つだけある」
「なんだよ」
「キスして、今ここでその子に」
「は?」『…っ』
「恋人同士なんでしょ?できるよね」
「そ、そんなん人前ですることじゃねえだろ」
柴くんとキス…三ツ谷くんの目の前で?
そんなこと出来ないよ。できない…。
「はやくしなさいよ、それとも嘘なの?」
だけど私も三ツ谷くんを助けたい…
『…っ今ここで。私と柴くんがキ、キスしたら三ツ谷くんを離してあげてください。』
「はあ?どうして?」
『三ツ谷くんが辛そうです…っ。』
さっきから呼吸が不規則で汗をかいている。
頬も薄らと紅く染まっている。
自分と似た症状…同じ薬を飲まされたのかも。
「まあいいわ。今日するのは諦める。
三ツ谷があなたのモノじゃないならこの先いつでも思う存分私とイイコトができるものね。」
『…っ』
「ごめん…俺が嘘ついたから…」
私にしか聞こえない声で申し訳なさそうに謝る柴くん。私を守ろうとしてついてくれた嘘なのに…。
『ううん、こうしてなきゃ私も三ツ谷くんもきっと酷い目にあってた。だからありがとう柴くん。気にしなくていいから…キスして?』
side 柴八戒
気にしなくていいから キスして?
大きな瞳に今にもこぼれ落ちそうなほどたくさんの涙をためて俺を見上げる彼女。気にしなくていい、そう言いながらも俺の胸に触れた彼女の手は震えている。
俺の彼女だと咄嗟についた嘘が
良かったのか悪かったのかなんて分かんねえ。
ただ守りたかった。
これ以上傷ついて欲しくなかった。
キスなんかしたことねえ…のに。
あぁタカちゃん顔が見れねぇ。
きっと昨日俺と別れたあと2人は付き合ったんだろ?俺今からタカちゃんの彼女にキスするね。俺の初恋で…今もまだ諦めきれてない。けどこんなキスは嬉しくねえよ。俺を好きなとしたかった。タカちゃんのために俺となんて…こんなの誰が喜ぶんだよ。