第8章 トライアングル (三ツ谷隆 柴八戒)
八戒が1番に紙を選んで立ち止まったときもしかしてジョーカー引いたんじゃねえかなって思った。
放送席からのアナウンス
ジョーカーは “ 好きな人 ”
異性か同性か書いてないみたいだし
恋愛感情か友情かも書いてないみたいだ。
もしかしたら俺のとこ来るかなって
いやでも…もしかしたら。
《青ブロック柴くんが走り出しました!
向かったのは…青ブロックの生徒席です!
さあ彼の想い人は…!?》
八戒が真っ直ぐに向かった生徒席。
俺は待機列にいるからそこにはいない。
だから八戒はきっと…
ザワつく生徒席。
会話は何も聞こえてこない。
《柴くんと一緒に走っているのは…!
お!我らがバスケ部のだ〜!!!》
八戒に手を引かれて飛び出したのは。
心臓がぎゅっと痛む。
まさかあの八戒が公開告白するなんて。
退場してそのまま校舎の端の方へ
2人で行ってしまった。
俺たちが入場する頃には戻っていたみたいでチラッと横目に見ると楽しそうに話す2人が視界に入った。もしかして…いや、本人の口から聞くまでは分かんないだろ。
ピストルの音と同時に飛び出して紙を取りに行く。開くと中には “ 可愛くて仕方のない異性 ” と書いてあった。ジョーカーだなって理解すると同時に俺は生徒席へと向かう。
昨日は妹みたいだなんて言って誤解させた。
妹ならこんな気持ちになったりしねえのに。
お前が可愛くて仕方ねえから触れたいのに。
「きて!」
迷うことなく彼女の名前を呼ぶ。
『えっ?』
驚いた顔してる。
内容知らないし驚くよな。
「しかいねえの!
だから俺と一緒に来てくれ」
でもお前しかいないから。
腕を伸ばして彼女の手を取ると戸惑いながらも
生徒席を抜けて俺の隣を走ってくれる。
『み、三ツ谷くん!お題...は?』
《今年の3年男子ジョーカーは…!
可愛くて仕方のない異性!!
さあ!これを引いたのは誰だーーー!!?》
「俺引いたのジョーカー」
『ジ、ジョーカー…って、え!えっ?』
「なんて顔してんだよ、ほら1位とるぞ!」
『は、はいっ』
少し赤らめた頬。期待してもいいのか?
まだ誰のものでもないって。
違うならそんな顔しないでくれ。