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今宵は誰の腕の中で眠りますか⋯?

第8章 トライアングル (三ツ谷隆 柴八戒)


柴くんにグータッチをして招集場所に駆け出すと背中からかかる声。

「っ」

『三ツ谷くん!』

そっか、三ツ谷くんも選抜リレー出るって言ってたもんね。肩まで捲られた袖から見える程よく筋肉のついた腕。制服を着ている時はあんまり分からないけど男の人の腕って感じだ…かっこいいなあ。

「ハチマキちゃんとつけてるんだな?」

『も、もちろんですっ
せっかく交換したんですもん。』

「ふはっ、嬉しいよ」

俺もちゃんとつけてるよって頭のハチマキを指さしたあと、嬉しいよと柔らかく笑って私の頭を撫でた。きゅうっとなる心臓が苦しい。どんなに想っても三ツ谷くんは私を妹のように思ってるだけなのに。

『…っリレー頑張りましょうね!』

誤魔化すように当たり障りない会話を。

「おう、1位とれよ?」

『当たり前です、勝ちます!』

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

私は宣言通り1位でゴールテープを切った。

2位で回ってきたバトン。
アンカーはトラック2周を走る。

三ツ谷くんと交換したハチマキ。
三ツ谷くんと交わした約束。
絶対に1位をとりたくて走った。

三ツ谷くんの選抜チームも1位をとって
2.3年は青ブロックが1位という結果。
1年生も2位で幸先が良い。

「最後の追い上げ凄かったな!」

『三ツ谷くんも抜いてたじゃないですかっ』

「ん、お前の頑張れって声聞こえたからな」

『…っ聞こえてまし、た?』

「三ツ谷くん頑張れーってな?」

『は…ずかしいです。』

「俺は嬉しかったぜ!
お前の声が1番聞こえたよ」

三ツ谷くんにバトンが渡った瞬間。
考えるよりも先に声が出ていた。
だけど言ったあとに恥ずかしくなって三ツ谷くんの名前を呼んだのは1度だけ。その1回が聞こえてたなんて…はずかしい。

『でも…三ツ谷くんの声も聞こえましたっ』

「そっか、届いてよかったわ!」

走りながら何度も聞こえてきた声。

“ 頑張れ!抜けるぞ! ”

三ツ谷くんの声だってすぐに分かった。
それが嬉しくて、応えたくてペースを上げた。

「お、青ブロックの1位2人だね〜!
記念に写真とらせてよ!」

体育祭の写真を撮ってくれるカメラマンさんに
声をかけられて私たちは初めて2人で写真を撮った。
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