第8章 トライアングル (三ツ谷隆 柴八戒)
パタンと玄関を閉じてからバイクのエンジン音が聞こえる。私が変なことを聞いてしまったばっかりに少し気まずくなってしまった。
ハチマキを交換しようと言ってくれた。私の髪は綺麗で触れたくなると言ってくれた。三ツ谷くんの言葉に浮かれた。だからもしかしてって思った。
『…い、妹にするみたいな、感じですか?』
違うと言って欲しかったんだと思う。
「そうかもな」
と、返ってきた瞬間心臓がひゅっとなった。
少し痛くて一瞬上手く息が吸えなかった。
逃げるように三ツ谷くんから離れて
それを感じとった彼も 帰る と言って…。
それでも私が玄関に入るまで手を振ってくれていたし、鍵を閉めるのを確認してからエンジンをかけていた。妹みたいな私に対する三ツ谷くんなりの優しさであって、だからどうということは無いみたい。ただ彼の優しさを勘違いした私が悪い。
明日の体育祭…ハチマキ交換してくれるかな。
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少し重いままの心を抱えて学校へ向かう。
三ツ谷くんに会ったらどんな顔すればいいのかな。
「?」
『…柴くん?』
ひょいっと後ろから私の顔を覗き込む柴くん。
彼から話しかけてくれのは珍しい。
「何回か声掛けたんだけど…」
『うそ、ごめんね気づくの遅くて。』
「顔疲れてるし…なんかあった?」
顔にまで出るとか…
どんだけ三ツ谷くんのこと考えてんのよ私。
『ううん、別に何も無いよ。』
「そう?ならいいけど…」
そう言いつつも心配そうな表情で私の隣を歩く柴くん。話題を変えないと…えっと。えーっと。あ、
『今日の体育祭頑張ろうね』
「あ、うん。頑張る!」
『柴くんは借り物競争と中距離だよね?
借り物競争毎年盛り上がるから楽しみだなあ』
「変なの引かなきゃいんだけど…」
『あー、去年あったやつなんだっけ…あのー』
あれだ
『「薄毛の先生!」』
「はは、あれやばかったよなあ〜」
『引いた人も選ばれる先生も可哀想だし笑』
柴くんと話してると幾分か気が紛れる。
心も少し軽くなった。
私の前でもよく笑うようになった柴くん。
少しづつ距離が近づいているようで嬉しい。