第8章 トライアングル (三ツ谷隆 柴八戒)
いつもの様に彼女の家の前でバイクのスタンドを立てて、少しだけ立ち話をする。夜風がふわりと彼女の髪を揺らして…触れたいと思った。いや、そう思った時にはもう触れていた。
『…三ツ谷くん?』
「髪綺麗だな、すげえサラサラ。」
ボブよりも少し短い髪。
部則で伸ばせないんだっけか。
『汗かいてますよ!?』
「別に気にしねえ」
1束掴んで髪質を確かめるように指で触れたあと、きょとんとした彼女の頭を撫でる。
『三ツ谷くんどうしたんですか?』
「の髪は綺麗で触りたくなる」
『…い、妹にするみたいな、感じですか?』
「え?」
『あ、いや…三ツ谷くん妹がいるから。
年下の女の子は撫でたくなるのかなーって…?』
「あ、ああ…そう、かもな」
『…っそうですよね』
「じゃあ、そろそろ行くわ。
早く家入りな」
俺からスっと離れたが玄関の扉をあけて家の中へと入る。その表情が悲しそうに歪んでいた。いつもみたいに彼女が鍵を閉めるまで見送ってから単車にエンジンをかける。
妹にするみたいな感じですか。
そう聞かれて 「違う」と言えなかった。
ただ照れくさかった。
まだ告白をするには早いと思ったから。
変に誤魔化しちまった。
だけどあんな顔させるくらいなら…
違うって、好きだからだって言えばよかった。
逃げるように家の中へ入った彼女と帰ると言った俺。このまま距離ができちまったらどうしよう。
いつの間にか大きくなっていたへの気持ちに自分で驚く。笑った顔も照れたような表情も、悲しそうな顔でさえ独り占めしたい。