第8章 トライアングル (三ツ谷隆 柴八戒)
明日は体育祭。
今日もいつもの様に部活を終えて帰り道を1人歩いている。遠くから聞こえるバイク音。その音が三ツ谷くんのバイクの音だと気づけるようになったのは最近。
「よお、。部活おつかれ!」
ほらね、やっぱり三ツ谷くんだ。
インパルスってバイクに乗ってるらしく、前に教えてくれた時は楽しそうに愛機の話をする三ツ谷くんが少年のようで可愛らしかった。
『やっぱり三ツ谷くんだ』
「やっぱりってなんだよ?」
『最近、三ツ谷くんのバイクの音が分かるようになりました。だから三ツ谷くんから声がかかるまで確認せずに当てたくて…1人でクイズしてました笑』
「んだそれ笑
んで今日は正解したってわけだ?」
『はいっ!』
「正解おめでと」
くしゃっと私の頭を撫でた三ツ谷くん。
トクン、と跳ねる私の心。
「おし、じゃあ後ろ乗りな」
『あ、えっと…えっと…』
「ん?」
三ツ谷くんにキュッとしがみついてバイクで帰るのは好き。だけどすぐに着いてしまうのがいつも悲しくて…今日はもう少し一緒にいたいなんて勇気を出して言ってみようかな…とか。
『き、今日はバイクじゃなくて…っ』
「…やっぱりバイク怖かったか?」
わざわざエンジンをきってスタンドを立てて私をのぞき込むように心配そうな表情をする三ツ谷くん。
『ちが、ちがいますっ!
三ツ谷くんの後ろ乗って帰るの好き…です。』
「好き…ん、そっか…
じゃあどうしたんだ?」
好き、ってとこだけ切り取らないで…恥ずかしい。
『あの…今日は歩いて帰り…たいです。』
「あ…そっかごめんな。
1人で帰りたい時もあるよな…ごめん」
『え?ちが…っ!一緒に、です。
三ツ谷くんと一緒に歩いて…帰りたい。』
「え、あ、俺と?」
『あ…でもバイク押すの重いですよね。
ごめんなさい…また、今度一緒に歩い…「歩こ」』
『え?』
「こんなん全然大丈夫だから歩いて帰ろうぜ」
ニッと笑って私の為に取り出してくれていたヘルメットをしまう三ツ谷くん。スタンドをあげて歩き出す彼の隣に私も並んだ。
なんだか心がふわふわとして浮かれているのが自分でわかる。