第8章 トライアングル (三ツ谷隆 柴八戒)
「あーいやいやそんな構えんなって
痛いことはしねえから…イイコトしような?」
『え…と、私帰ります…っ』
その男に背を向けて走り出すと
「逃げられると思ってんのか?」
グッと腕を掴まれて痛みが走る。
『い…たいですっ』
「痛いことされたくなかったら大人しくついてこい」
『…すけて…誰か助けて…っ』
「あ?この時間はこの道人通り少ねぇから諦めろ」
いや…怖い。どこへ連れていかれるの…?抵抗するだけ無駄だと理解しつつも怖くて涙が溢れそうになる。
「おい!何やってんだテメェ」
誰か来た…?助かる…?
私の腕を引き前を歩く男の足がピタリと止まる
「み…三ツ谷くん…!?」
私の腕を掴む男が焦ってることと
三ツ谷って人が来たことは分かった。
「その子の腕離せ。」
解放されてもなおジンジンと痛む腕。
「お前…肆番隊か?っ何やってんだコラ!!
東卍が女に手ぇだすな!マイキーの顔に泥塗んじゃねえ!テメェは今からスマイリー呼ぶからここで大人しく待っとけ分かったな?」
「…ウス。」
「逃げたら伍番隊呼ぶからな?」
「…っに、逃げないっすよ!」
目の前で繰り広げられる会話についていけず放心状態になる。東卍?マイキー?肆番隊?伍番隊?…この人たちきっと本物の暴走族ってやつだ。けどこの三ツ谷くんって人は…助けてくれたのかな。いい人なのかもしれない。
「わりぃ待たせた…大丈夫か?
お前今日の休み時間八戒といたやつだろ?」
恐る恐る顔を上げると心配そうに私を見つめるパープルグレーの瞳。すごく…綺麗な目だな。
『あ、えと…そうですっ』
柴くんの友達?暴走族の人が…?
…っていうか同じ学校に暴走族いたの!?
「俺は三ツ谷隆、お前は?」
『…です。
あの、助けてくれてありがとうございました!』
「別に…っておい、そんなに怖かったか?」
『…っえ?
…あれ、ごめんなさいっ』
安心したせいかポロポロと涙が溢れて止まらない。
「もう大丈夫だぞ、俺がいるからな」
そう言って頭を撫でてくれた三ツ谷くんが
ハンカチを手渡してくれた。
『えと…汚れちゃ 「気にすんなよ使いな」』
私の言葉を遮ってそのハンカチで涙を拭いてくれた。
そのまま返してくれて構わないと言ってくれたけど、そういう訳にもいかず洗って後日返すことにした。