第7章 心酔愛(乾 青宗 / 九井一)
「もっと撫でて」
『よしよし青宗、いい子だね』
「ん、に撫でられるの好き。」
『知ってる』
「ここ座って」
ベッドに腰かけた青宗が自分の足の間をポンポンと叩くから素直にそこへ収まった。
「髪まだ濡れてる…俺が乾かしていい?」
『じゃあお願いしようかな』
机の引き出しに手を伸ばしてドライヤーを手にした青宗が丁寧に私の長い髪を乾かしていく。どんな表情をしているのか、背を向けていて確認できないけど伝わってくる哀しいようなもどかしいような雰囲気。
「…」
『ん?』
「怒ってる?」
『どうして?』
「俺が勝手に来たから…」
『そんなことで怒らないよ。
まさかいるとは思わなかったから驚いただけ』
「そっか、怒ってないなら良かった」
ほっとしたような青宗の声。
少し震えて聞こえる。
『もう乾いたからいいよ、ありがとう』
ドライヤーをかけ始めて10分。
青宗はやめる気配がない。
「まだ乾いてない。」
『いや乾いてるよ…』
自分で触って確かめてみるとちゃんと乾いてて…それでも頑なに乾いていないとドライヤーの電源を切らない青宗。
「…っまだ。」
声…やっぱり震えてる。
『青宗?』
振り返って彼の手からドライヤーを奪うと今にもこぼれ落ちそうなくらい瞳に涙をためていた。ときおり鼻を啜って涙が落ちないようにこらえている。バレないようにドライヤーの音でかき消したかったんだ。
「…ねえ俺たちの関係ってなに」
震える声で紡がれた言葉
そんなの決まってるよ
『私たちはただの幼なじ…「違うだろ!」』
『…っ青宗』
「ただの幼馴染なら俺はこんな気持ちになったりしない。」
やだ…聞きたくない。
「俺はのことが」
『青宗やめて!聞きたくない!』
「聞けよ!分かってるくせに…っ
俺の告白遮るの2回目だよな…
そんなに俺が…嫌か?」
『ちがう私はただ…っ
青宗とはじめが同じくらい大切だから。
どっちかとなんて考えられない。
これからも3人でいたいの。』
だから聞きたくないの。
聞いたら私たちは戻れなくなる気がして嫌なの。
選ばなくちゃって考えたくない…。