第7章 心酔愛(乾 青宗 / 九井一)
『ワカくん…巻き込んでごめんね』
「黒龍の総長にはこういうのが付き物だろ
しんちゃんもよく絡まれてたよ。
俺達が助けに行かなきゃボコボコにされちまうから
ベンケイと2人でよく助けに行ったっけ」
『しんちゃん喧嘩弱いもんね』
「なんか久々暴れられて楽しかったよ
普通の女の子と出かけてもこうはならないしね
さすがだよ、最高のデートだわ」
そう言ってくしゃっと笑うワカくん
この人はどこまでも優しい人なんだな。
気を遣わせない天才だ。
『ワカくん』
「なーに?」
『連れ出してくれてありがとう』
「ん?」
こうやってとぼけるのもワカくんの優しさ。
だけどちゃんと分かってるよ。
『はじめと青宗がべったりだからたまには私を自由にさせてやろうって思ったんでしょ?ワカくんが誘えば2人は反対して来ないだろうし…違った?』
「なんだバレてんの?笑
まあそんなとこかなー
たまには息抜きしよーよ」
『うん、たまには』
「また俺が連れ出すよ」
二ッと笑ったワカくんが眩しい。
青宗とはじめとの曖昧な関係はまだ続くと思う。自分がどうしたいか分からなくなったとき、はじめと青宗には相談できないとき、どこかへ連れ出してほしくなったとき、私はきっとまたワカくんを頼ってしまう。
『少し日が伸びてきたね。
まだ明るいけどもう夕方なんだ…』
ワカくんの後ろに乗って走っているとあっという間に夕方になっていた。日が伸びると時間感覚おかしくなるなあ。
「最後に連れていきたいとこあるんだけどいい?」
『 うん、もちろん』
連れていきたいところがある、と
ワカくんはさらにバイクを走らせる。
着いたのは夜景の見える公園。
『 わ…キレイ…』
「俺のお気に入りの場所。
1人になりたい時はたいていここにいる」
『 私に教えてよかったの?』
「も1人になりたい時はここ来なよ。俺の事誘ってくれてもいいし。ほんといつでも連れ出すからさ。」
『うん…ありがとワカくん。 』
「ちょっとは気分転換出来た?」
『ワカくんのおかげでだいぶ気分転換できた』
「それなら良かった」
フワッと私の頭を撫でたワカくんが優しくて
胸がジーンとあたたかくなった。