第7章 心酔愛(乾 青宗 / 九井一)
『まずは…勇気を出してくれて伝えてくれてありがとう。同性だし、伝えるのに勇気いるよね。』
「…そんな、お礼なんて…」
『でもね、私は桜香ちゃんとは付き合えない。』
「…はい。分かってます…。」
薄らと瞳に涙を溜めた彼女がそれを堪えながら
しっかりと私の目を見る。
『それは桜香ちゃんが女の子だからじゃなくて、今は恋人を作るつもりがなくて…。私の問題なの…ごめんね。』
「私に告白されて…軽蔑しなかったんですか?」
『誰が誰を好きになるかなんてその人の自由だよ。女の子が女の子を好きになったって構わない。それに私は嬉しかった。桜香ちゃんが私を好きだって言ってくれて嬉しかったんだよ?』
「せ…んぱい…っ」
ポロポロとこぼれ落ちる桜香ちゃんの涙を私は指で受け止めながら続く言葉を静かに待った。
「わたし…っ、1年生の頃からずっと先輩のことが気になってました。だけど特に何の接点もなくて…だけどあの体育祭の日、怪我をした私に当たり前のように手を差し伸べてくれて…本当に素敵な人だなって思いました。」
『うん』
「リレーも応援団も…全部全部かっこよくて。ヒーローみたいに輝いて見えました。きっと私は振られても先輩のことが好きだと思います。こんなに素敵な人に恋をできた私は幸せですから。」
『うん、ありがとう』
「…こんなにちゃんと機会をくださってありがとうございましたっ。結果は分かってたので…でも伝えられて良かったです!だから最後に言わせてください。」
『うん?』
「私は先輩のことが大好きです」
こんなに真っ直ぐ気持ちを伝えてくれる桜香ちゃんに胸が苦しくなった。私もいつか大切な誰かと結ばれる日が訪れるのだろうか。青宗とはじめは…これからも3人でいたいからなあ。どっちかとなんて考えられないよ。
『…ありがとう桜香ちゃん
これからは仲の良い先輩後輩としてよろしくね』
「…はいっ」
笑顔を見せてくれた彼女を家まで送って
私は真ちゃんのバイク屋へと向かった。