第6章 狂おしいほど愛してる②(梵天)
ブチッと一方的に切られた通話。
青くなった顔。震える2人の客。
『え…今の…マイキー?』
「はは、だろうな。
まあこれで分かっただろ。」
「そろそろ行くぞ。
立てるか?」
ふるふると首を横に振るとふわっと体が浮いた。カクちゃんが私を横抱きにして着ていたジャケットをかけてくれた。
「乱暴な言葉使って悪かったな
詫びといってはなんだが…」
はじめくんに指示されてボーイの子が持ってきたのはこの店でいちばん高いお酒が数本。
「ここの嬢とこれで遊んでくれ
んでうちの姫のことは忘れろ」
「…は、はい」
「では、これからもどうぞ宜しくお願い致します。」
最後に意味深な笑顔を向けたはじめくんが
くるっと男たちに背を向けて部屋を出る。
それに続いて私たちも部屋をあとにした。
「…大丈夫か?
先に中身確認すれば良かったな…。」
『んーん、毒とかじゃないし…っ
媚薬なら…時間経てば抜けるから…へ、きっ』
平気とは言いつつもジャケットが擦れる度に
カクちゃんの手が触れる度に…
「もう車来るから。
…って何してんだ!!」
プチプチ、とカクちゃんのシャツのボタンを外してその隙間から手を滑り込ませる。そして顔を寄せて素肌に舌を添わせてみた。
「ば…っか何して…っ」
私を抱えているため抵抗が出来ないカクちゃん。
「おいだめだろ?
鶴蝶童貞なんだからやめてやれよ」
「余計なこと言うな九井!!」
「すみません、お待たせ致しました!」
到着した車から芹沢くんが降りてきてドアを開けてくれた。私を見て心配そうな表情をするから
『芹沢くんお迎えありがと』
「い、いえっ」
平気よ、とつけ加えて車に乗り込んだ。
行きと同様二人に挟まれるかたちで。
車の揺れさえも敏感になった体には苦しい。
「…辛いだろ?
苦しいなら俺がラクにしてやろうか?」
『ん…っだい、じょーぶっ』
そう言って私を覗き込むはじめくん。
正直辛いけど春くんと約束したから。
まっすぐ春くんのところへ戻るって。