第6章 狂おしいほど愛してる②(梵天)
「あいつと何話してた?」
少し不機嫌なはじめくんの声。
『芹沢くん?』
「アイツ芹沢っていうのか」
『あのね、いつも良くしてくれてありがとうございますって前にこのヒールプレゼントしてくれたんだよ。』
「…はぁ。ちょっとこっちこい。」
『ちょっと…っ』
ため息をついたはじめくんに手首を引っ張られて人の死角になる所へ連れてこられた。
「…部下まで惚れさせてどうすんだよばか。」
『え…?何言って…ン!』
突然塞がれた唇。呼吸さえ飲み込まれるような感覚にどんどん酸素を奪われていく。
『く…くるし…っい…っ』
トントン、と胸を叩くと
苦しい表情の私に気がついて解放してくれた
「…っわるい」
『っどうしたの…はじめくん』
「今度は俺があげた靴履いてこいよ」
『え?』
「お願いだよ。
俺といるときは全身俺があげたものにして。」
『はじめくん…?』
「ダメか?」
『別にそれはいいけど…』
「ん、いい子。
じゃあ行くぞ、鶴蝶が待ってる」
私の返事を聞いて満足気な笑顔を浮かべたはじめくんが私の頭を撫でてもう一度手を引き歩き出す。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「お前ら何してたんだよ…」
「別になんでもいいだろ」
『ごめんねカクちゃんお待たせ』
お店の前で既に待っていたカクちゃんと私たち3人で揃って中に入る。煌びやかな内装。何度来ても目がチカチカして酔ってしまいそうになる。慣れないなあ。
「お待ちしておりました。
奥の部屋へお通し致します。」
ボーイと呼ばれる黒服の男性が私たちを奥の部屋に通すと、少し緊張した表情の店舗責任者が待っていた。
「御足労頂きありがとうございます。」
『お久しぶりです、お元気でしたか?』
「はい、さんもお元気でしたか?」
『はい、おかげさまで!
それで…私は売上よりも女の子のケアを、と思って来たのですが嬢達はいますか?』
「はい、おりますよ。
そちらへご案内しましょうか?」
『お願いできるかしら』
「もちろんです」
売上とかそういう難しいことはよく分からないし、私がいても邪魔になるだけだから私は女の子たちのケアをしてあげたい。高いお酒を沢山飲んでお客さんの機嫌をとるのは容易いことではないはずだから。