第1章 好きです先生 (松野千冬)
ピーンポーン
『あっ荷物かな!
はーい今でますー!』
パタパタと走っていってしばらくして戻ってきた。
『おばあちゃんからイチゴ届いたあ!』
「よかったじゃん。
イチゴすげえ好きだもんね」
『え!覚えてたの?』
「あ、いや、うん…まあ。」
ちゃんが好きな食べ物、好きな色、好きなこと、最近知った好きな男のタイプ…話してくれたのが何年前だろうと好きな女の好きなものくらいずっと覚えてるに決まってる。
『あ、夜ご飯まだだったね!
千冬くん何食べたい?』
緊張しすぎて夕飯食ってないの忘れてた…
「んー、ちゃんが作るの?」
『うん、なんか作ろーかなって』
「あ、俺あれ食べたい!
前に作ってくれた…麻婆豆腐!」
ちゃんが作るご飯はいつもすげえ美味しくて永遠に食えるんじゃねーかなって思ったことさえある。とくに以前作ってくれた麻婆豆腐がすげえ美味くて、べつに麻婆豆腐なんて普通に好きーって感じだったけどちゃんが作ってくれたのを食べてからもう1回食いてえと思ってたくらいだ。
『あー!千冬くんたくさん食べてくれたらすごい覚えてる!麻婆豆腐ね、了解!作るからテレビでも見て待ってて!』
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しばらく経って『もうできるから!』ってキッチンから可愛い声がした。料理してるちゃんをチラチラみてテレビの内容なんてまるで頭に入ってこなかった。
『できたできた!
お待たせ千冬くん!どーぞっ』
「そーこれこれ!
ずっと食いたかったんだよ!」
2人で手を合わせて夕飯を食べ始めた。
うんま…くそうっま…。
「くっそ美味しい…幸せ…」
『わあ嬉しいなあ…っ
そんなに美味しそうに食べてくれると
作りがいあるなあ…!』
「俺明日もちゃんの手料理食いたい」
『もちろん!一緒に買い物行こうね
好きなお菓子かってあげるー』
「好きなお菓子て…ガキじゃねーっつの!」
やっぱり8コも年下だとガキ扱いされるよな…
男として見てほしいなんてワガママなのかな。
『ごめんごめんつい!
でも少し会わない間にこんなにかっこよくなって
私びっくりしたんだよー!』
分かってるよその言葉に意味が無いことくらい。
だけど期待しちゃう俺はやっぱガキなんだよな…。