第4章 好きです先生②(松野千冬)
2人で玄関をでて、そのままエントランスに向かおうとする俺を引き止めるちゃんの声。
『あ、千冬くんそっちじゃない!』
くるっと向き直してちゃんのあとを着いてくとついたのは駐車場。てっきり近くのスーパー行くと思ってたのに車で行くのか?あ、荷物重いから?俺がいるから持たせればいいのに。
「そんなに買うもんあんの?」
『え?ううん?』
「なんで車?」
『だって近くのスーパーだと誰かに会っちゃうかも…でしょ?少し遠くのスーパー行こうかなぁと思って…ごめんね私の立場に付き合わせちゃって…!あれだったら部屋で待っててくれても!』
「いや、俺も行く。一緒にいきたい。
気づかなくてごめん。ちゃん俺の担任の先生だもんな。バレたらいろいろ面倒だよな。」
そっか、ちゃんは先生で俺は生徒。学校の奴に見られたらちゃんの立場的にまずいよな。俺達が幼なじみだってことはきっと隠した方がいいんだ。秘密の関係みたいでなんか嬉しい。
『ありがとう千冬くん、じゃあ行こうか』
ちゃんが運転席に、俺は助手席に乗って車が動き出す。
「ちゃんの運転乗るの久しぶり」
『そうだね、前に2人でドライブいったきりだね』
「あー、あれ楽しかったなあ。また行きたい。」
『行こうよ!また行こう!』
いつの日か喧嘩に明け暮れて傷ばっかり作っている俺をドライブに行こうと連れ出してくれたちゃん。あの頃の俺は自分が一番偉いと思ってたどうしようも無いやつで、だけどちゃんの話だけは素直に聞いてたっけ。分かりやすすぎんだろ。
「俺が免許取ったら1番に助手席乗ってよ」
『え、いいの!乗る乗る!』
免許を取れるまであと3年。そのとき俺の隣にいるちゃんは彼女になってて欲しいな。そんでいろんなとこ行きたいな。
他愛もない話をしていたら直ぐにスーパーについた。結局俺はロールキャベツをリクエストして、アイスも買ってもらって、俺たちはもと来た道を戻った。もちろん荷物を運ぶのは俺の役目。