ヴォード家に嫁ぎました!【ブラッククローバー / R18】
第3章 喪失※
「男の部屋に自ら入るなんて随分と不用心ですね……ミライさん」
ランギルスさんはそう言うと、不敵な笑みを浮かべた。何度もノックをしたのになぜ応答しなかったのだろうか。相変わらずランギルスさんが何を考えているかわからないので、2人きりのこの状況から早く逃げ出したかった。
「そんなつもりじゃ……勝手に入ってしまってすみませんでした。ノックしても応答がなかったので……お食事の時間なので行きましょう?」
「そうですね……行きましょうか……」
ランギルスさんはそう言うと、ドアに向かった。静かな部屋に錆びた金属音が響き、それが部屋の鍵を閉めた音だと気づくまでに時間はかからなかった。
「……ランギルスさん?」
ランギルスさんはわたしの腕を強く引っ張り乱暴にベットに押し倒した。そしてわたしの両手首を押さえつけ、組み敷いた。
「ランギルスさん……?早く食堂に行かないと……みなさん心配しますよ……?」
そう言ってもランギルスさんはわたしの手首を離さない。上から澄んだ青い目で見下ろされ、恥ずかしくなり顔を逸らした。
「兄さんとは随分仲が良いようですね……毎日中庭でベタベタと……いちいち僕の癪に触るようなことを言って……」
フィンラルさんと中庭にいるところをランギルスさんに見られていたようだ。今日のお昼の会話も聞かれていたのだろうか。
「兄さんとはもう、したんですか?僕が弟だからって甘く見てたら、どうなっても知りませんよ……?」
フィンラルさんとはもちろん体の関係はないし、まだ許嫁である身でそんなことをするわけがない。王族や貴族の身であれば軽々しく性行為をできないことを知っているはず。現にわたしは性経験がないし、それどころか恋愛さえしたことがない。
「フィンラルさんとはそんな関係じゃありません……それはランギルスさんも知っているはずです……」
「許嫁とはいえ、ただの男と女ですよ……?しちゃいけないなんて誰が決めたんですか……?」
「そ、それは……わかりません……」