ヴォード家に嫁ぎました!【ブラッククローバー / R18】
第4章 秘密の共有※
食堂のドアを開けて中に入ると、お母様が心配そうにこちらを見てきた。
「あら?ランギルスさんとミライさん、随分と遅かったわね?お先にお食事をいただきましたわ。」
「お母様、申し訳ありません。ミライさんは僕の勉強を見てくれていたんですよ。」
ランギルスさんはお母様に笑顔で嘘をついている。
「まぁ!ランギルスさんはとても勉強熱心で偉いわ。ミライさんにも感謝するわ。」
「は、はい……とんでもございません……」
「あら?ミライさん着替えてらしたの?」
「そ、そうなんです……えと……転んで汚してしまったので……」
「あら……大丈夫なの?心配だわ。さっ、どうぞ召し上がって。」
嘘を隠すための作り笑いに必死で、顔が引き攣ってしまう。ランギルスさんを見ると、何事もなかったようにふつうに食事をしていた。わたしは思うように食事が進まなかった。
食事が終わると、わたしは1人になりたくて中庭で月を見ていた。いつものようにぼーっとしたくても、さっきの出来事が頭から離れない。今までフィンラルさんのことばかりを考えていたのに、今はランギルスさんのことで頭がいっぱいになっていた。
「ミライさん?ミライさ〜ん?」
フィンラルさんの声がしてハッとした。
「は、はい!フィンラルさん……」
「お食事のときに元気がなかったので心配で……来てみたんです。どうしたのかなって……」
フィンラルさんは深刻そうな表情でわたしの顔を覗き込んだ。心配してくれているのがひしひしと伝わってきて、申し訳なく思った。
「心配をおかけしてしまって、ごめんなさい……わたしは大丈夫ですから」
「よければ明日、気晴らしに俺と王都に食事にでも行きませんか?ミライさんがよければ、ですけど……」
フィンラルさんからのお誘いを断る理由がなかった。こうして少しの変化にも気づいてくれて、食事に連れ出そうとしてくれている。フィンラルさんはやっぱり、優しくて気遣い上手で、何も悪いところがない人だった。
ランギルスさんとしたときのわたしはどうかしていたのかもしれない。自分の痴態を思い出すと恥ずかしくなってきてしまい、顔に熱が集まる。フィンラルさんを傷つけないためにもあの事実はなかったことにすればいい、そう思った。