ヴォード家に嫁ぎました!【ブラッククローバー / R18】
第3章 喪失※
「少し休んだら、行きますよ?父さんや母さん、兄さんにあやしまれる……」
わたしはフィンラルさんのことを裏切ってしまった。この事実は変えられない。隠さなければならない秘密をつくってしまった。
ヴォード家はランギルスさんを時期当主にしようとしている。ランギルスさんが時期当主になるのであれば、何ら問題はないことである。だが、まだ正式に決まったわけではなくフィンラルさんとも約束を交わしておきながら、こんなことをしてしまったわたしはなんてはしたない女なのだろうか。そんな自分に嫌気がさしてくる。
早く戻らなければあやしまれてしまう。いつまでもこの部屋で休んでいるわけにはいかない。そう思い、ベットから降りた。髪の毛を整えようと部屋の鏡を見ると、首に赤いアザが無数についていた。これは一体……
「あ、あの……ランギルスさん?この首のアザ……」
「あぁ、それはミライさんが僕のものだって印ですよ?いつもそんな胸元の開いたドレスを着ているから目立つんです。見られたくないなら露出の少ないドレスを着たらどうです?」
「へ……?そんな……また無茶苦茶な……」
「じゃあ、兄さんにバレてもいいんですか?別に僕は構いませんけど?」
「なっ……!部屋に戻って違うドレスに着替えてきます……」
「部屋の外で待ってます」
わたしはランギルスさんの部屋を出て自分の部屋に一旦戻り、首元が隠れる露出の少ないドレスに着替えた。
見えるところにアザをつけるなんて……ランギルスさんが何を考えているのかわからず、思考が追いつかない。のろのろと着替えていると、ドアを荒く叩く音がする。
「まだですか?早くしてくださいよ?」
ほらまた無茶苦茶で……偉そうでひねくれてて……何を考えているのかわからなくて……なのに、もう今までの苦手意識はなくなっていた。
ドアを開けると、ランギルスさんが立っていた。
「ほらっ、行きますよ」
ランギルスさんはわたしの手を握った。
「……え?」
「体……まだ痛いですよね。仕方なく、僕が手を繋いであげようと思って」
わたしはこのとき、なぜか胸がきゅんと締め付けられた。そのまま手を繋いで黙ったまま歩いた。食堂のドアの前に着くと、ランギルスさんはパッとわたしの手を離した。
「僕らの秘密ですね……2人のだけの」