C-LOVE-R【ブラッククローバー / R18】
第2章 未知の世界※
冷たい夜風がひゅうっと吹いた。寒い、と思った。その感覚がリアルだということを教えてくれる。
幸い栄えた町のようで目の前には王宮が聳え立っている。まるで中世ヨーロッパのような町並みに、すれ違う人々は王族や貴族のような服装をしていた。わたしの服装は露出が多く、汚いものでも見るかのような目でじろじろと見られる。
落ち着いた雰囲気のバーやレストランに明かりがついている。どこかに入って誰かに聞くしかない、と思った。行き交う人々の目が気になり、路地裏に逃げ込んだ。
────逃げ込んだ道の先には、こじんまりとした小さなバーがあった。
「いらっしゃい。」
中に入ってみると、バーのマスターがカウンターから挨拶をしてくれた。どうやらこの国は日本語のようである。店内は薄暗く、オイルランプが灯されている。重厚なバーカウンターが大人な雰囲気だ。
「あ、あの……とりあえずビールで、お願いします……」
「君、見慣れない顔だね?どこから来たの?」
マスターはわたしを不思議そうな顔で見ながら、はい、と出されたのは樽型のジョッキ。ごくん、とビールを一口飲む。そのきんと冷えたビールの喉ごしにこれは夢ではないんだ、と実感した。
マスターに異世界から来たことを正直に話したところで信じてもらえるのだろうか。このまま何も知らない世界でひとりぼっち、どうすればいい?このまま彷徨っていても野垂れ死ぬだけだ。信じてもらえなくても話すしかない、と思った。
「あの、実は……わたし……異世界からトリップしてきてしまいました……」
「……え?ハッハッハ!!君、酔っ払ってるの?」
マスターは信じてくれなかった。これ以上、何も言えなかった。横から威圧感を感じて顔をそちらに向けると、カウンターの端に座っている若い男がこちらを見ている。栗色の癖のある髪の毛をした若い男だった。
「僕が静かに飲んでるっていうのに……何だい、君は……下民の分際でこの店に入るとは、烏滸がましいね……」
「……すみません」
「異世界から来たなんて怪しいね……僕と、来てもらおうか?」
その男はマスターにお金を支払うと、わたしの腕を強く引っ張った。
バーの外に出ると、男は何も言わずに手を広げた。目の前に光の靄が現れる。その男はわたしをその中に押し込むように背中をどん、と押した。