C-LOVE-R【ブラッククローバー / R18】
第2章 未知の世界※
────わたしは、一瞬で違う場所に移動していた。大きなシャンデリアがあり、金色を基調としたとても豪華な部屋だ。ここはどこだろうか。
わたしは今、空間移動をした。さっきまでバーにいたのに、男の手から作り出された靄に入った途端、目の前の景色が変わっていた。思考が追いついてこない。男はベットにわたしを押し倒し、組み敷いた。
「この世界のことを、本当に何も知らないのかい?異世界から来た、なんて僕は信じられないね」
「し、知らないです……本当に、何も……」
「なら、僕のことも知らないよね……僕の兄さんのことも」
「兄さん……?何の、話しですか……?わたしは、突然この世界にトリップして……」
「なら、都合がいいね……僕の相手をしてくれよ?僕は兄さんのせいで気分がむしゃくしゃしていてね……」
綺麗な顔立ちに、澄んだ青い瞳でわたしを見下ろしてくる。彼の目の奥からは何か、に対する憎悪を感じた。顔が近くて、恥ずかしくなる。この状況から逃げたいが、逃げ場がない。相手、とはどういうことなのかわかっている。貴族なら娼婦を呼べばいいのに、と思った。
「いくらなんでも……そんなこと、できません……」
「なら、君は野宿でもするのかい?今晩、どうするつもりだ?」
「……」
わたしは言い返すことができず、黙ってしまった。どこにも行くあてがないからだ。この世界の何も、知らない。この世界の誰も、知らない。彼が一体、誰なのか、も────……
ひとりぼっち、それはものすごく怖いことだった。彼の体温がやけに温かく感じる。このまま彼に身を任せてしまおう、そう思った。
彼はいつもこんなふうに、誰かを抱いているのだろうか。彼は抱えきれない何かを、満たされない気持ちを、ぶつけるかのように。この世界のことも、お兄さんのことも、憎んでいるのだろうか。彼はこの世界でひとりぼっちに見えた。わたしはなぜか、彼のことを知りたい、と思った。
わたしがこの世界の何も知らないことは、彼にとって好都合なのかもしれない。
「黙ってるなら、僕の好きにしていいってことかい?僕の言うとおりにするしか選択肢はないでしょう?」
「……わかりました」
「だいたい君は……そんなに露出が多い服を着て、男を誘っているとしか思えないね……」
「そ、そんなつもりは……」