C-LOVE-R【ブラッククローバー / R18】
第5章 団員としてできること
────数日後
3人は魔宮での任務を終えて無事に帰ってきたのだが、戦闘で余程の体力を使ったようで、アスタはもう1週間も寝ていた。敵を倒したあと、魔宮が崩壊してしまい、危ないところで脱出した、と聞いた。目を覚さないアスタが心配でノエルは元気がなかった。
夜に王都へ出かけられる状態ではなく、ランギルスには会えない日が続いていた。この世界には、現実世界で当たり前の携帯という便利な通信道具は存在しない。
フィンラルから聞いた話では、魔法帝の側近である人物が交信魔法を使って魔法騎士団本部と、各魔法騎士団との連絡を取り合っている。基本的に、国民は手紙でやり取りをする。連絡手段のない、この世界だからこそ、ランギルスに会えることがうれしかった。
行き当たりばったりでいつもあの、バーに行く。約束をしなくても、そこに行けば会える、そう思っていつも会いにいっていた。ランギルスは魔法騎士団の一員であり、任務がある。会いにいっても、いないこともあった。だからこそ、会える時間が大切で、楽しみになっていた。
ランギルスに作る予定だったタルトの材料がだめになってしまう前に、作ろう、と思った。食べ物を無駄にしたらまずチャーミーに怒られてしまうし、身分の差がある世界だからこそ、食べ物を捨てることはできない。
タルトを作りに食堂へ行くと、チャーミーが何かを食べていた。
「モッチャリ、モッチャリ……ミライちゃん、何を作るんだい?」
「チェリータルトだよ〜!」
タルト生地を一から作り、発酵させる。生地を伸ばし、タルト型にのせてオーブンで焼く。焼いている間にカスタードクリームを作る。タルトが焼き上がり、クリームとチェリーの缶詰めをのせていく。
「よし、できた!チャーミー、味見して?」
「おいしいのら〜!」
元気のないノエルに食べてもらうため、部屋に呼びにいく。
「ノエル、食堂に来てくれる?」
「……え?別にいいけど……」
いつもより元気のない声が返ってくる。目を覚さないアスタが心配なノエルはここ数日、ご飯を残してばかりだった。甘いものなら、少しでも食べられるかな、と思った。