C-LOVE-R【ブラッククローバー / R18】
第29章 C-LOVE-R
突然のプロポーズから一夜明け、まだ現実味がないくらい幸せな気持ちだった。ランギルスはわたしの誕生日に合わせて式を挙げたいと言っていて、次の週末に式場の見学に行くことになっていた。
今日はいつものように会社の昼休憩で先輩とランチに来たものの、食があまり進まない。ここのところ、匂いにも酔ってしまうから困ったものだ。
幸せすぎて食欲がないのだろうか……?
「お腹、空いてないの?」
先輩にそう聞かれる。
「あ……、最近あまり食べれなくて。誘ってもらったのに、なんかすみません……」
「ねぇ、それってもしかして……」
先輩から小声で話された、その“ワード”。
思い当たる節がたくさんあるし、そういえば月のものも来ていない。突然香水をつけれなくなったのも、もしかして……そのせい?
その日は午後休を取り、病院へと向かった。まだランギルスは仕事中だし、ちゃんとわかってから話したかった。もしも、本当にそうだとしたら?待合室でどきどきしながら待っていると、名前を呼ばれて診察室へと入った。
モニターに映る影と、自分のものではない心拍音。どくんどくんと、鼓動が聞こえる。
「───っ?!」
先生は微笑んだ────……
その日の夜。
わたしはランギルスと“闇寿司”に来ていた。なぜか大事な話はこのお店でしようと思ったからだ。もちろん、お酒も飲まないし、生物も食べない。注文したのは、ヤミさん特製茶碗蒸しとリンゴジュース。つるんとした喉越しで出汁のきいたその味は、食欲がなくてもするすると食べることができた。
「ミライちゃん風邪?」
フィンラルにそう聞かれる。
「そういうわけでは……」
「なんとなくわかった」
ヤミさんは何も聞かずに、すでに気づいているようだった。
「あのね……ランギルス……話があるの……」
いきなり深刻な顔になったわたしを、ランギルスは心配そうに見つめる。
「どうしたんだ?」
「あの……えっと……お腹に子供がいるの……」
「え〜!!」
フィンラルが突然大声を出す。
「フィンラル!うるせぇ!」
「兄さん……うるさいです」
ヤミさんとランギルスは至って冷静だ。
「ミライ……本当かい?」
ランギルスは少し潤んだ瞳で、わたしを見つめた。