C-LOVE-R【ブラッククローバー / R18】
第29章 C-LOVE-R
わたしは夢でも見ているのだろうか。窓の外のレインボーブリッジはいつも通り点滅している。部屋中のキャンドルの光がゆらゆらと揺れている。いつも通り、正常に時は進んでいるはずだ。なのに時間の感覚さえもわからなくなるほど、わたしの意識は宙を漂っていた。けれど、ふと頬をなにかが伝った感覚に我にかえった。
ゆっくり瞼を閉じて開けて、大粒の涙が零れ落ちた。その雫の生温かさにこれは現実なんだ、と思った。わたしの中で止まった時間が動き出したように、意識がはっきりと戻っていき自分の心臓の音が耳についた。何か言いたいのに、言葉にならない。
「っ……はい」
涙で滲み、赤い色をした景色とゆらゆらと揺れる光に混ざったランギルスの顔をなんとか見据えて、精一杯の返事をした。
一瞬の間があって、ランギルスはくくっと喉を鳴らした。ランギルスが笑っている。視界がぐちゃぐちゃでもそれははっきりわかった。
「泣きすぎでしょう?」
ランギルスは呆れたように、でもどこか嬉しそうに言いながら、その細い指が優しくわたしの涙を拭った。わたしは泣きながら笑顔をランギルスに向けた。言葉にならない想いが伝わるように。
「今度こそ君とずっといっしょにいれるように、とあの日の流れ星に願ったんだ。その日から決めていた。今日、君にそれを伝えることを。僕の願いは叶ったよ、君が叶えてくれた。再会するずっと前から、次はもう二度と君の手を離さないと決めていたからね」
「叶わないわけない……わたしもランギルスとずっといっしょにいたい……わたしも同じだよ?」
想いを言葉にすると、また涙が溢れてくる。ランギルスはベットに置いてあった小さな箱から光るものを取り出した。そして、わたしの左手をとり薬指にはめた。きらきらした光がまぶしくて目を閉じると、全部消えてしまいそうなくらいにきれいだ。
「ありがとう……うれしくて……うっ……うう……ラン……ギ……すき、すきだよ」
「あぁ、知ってるよ」
涙を流しながら想いを伝えるわたしに、ランギルスは穏やかな表情で微笑んだ。ランギルスはわたしの濡れたままの頬を両手で包み込み、そっと引き寄せ唇を重ねた。
ふたりだけの世界のようだった。静かな部屋には自分たちの息遣いしか聞こえない。窓からは満月の光が差し込んで、わたしたちを照らしていた。