C-LOVE-R【ブラッククローバー / R18】
第29章 C-LOVE-R
「今日はここに泊まるの?」
「あぁ」
ランギルスは素っ気なく返事をした。タクシーを降りると、ランギルスはすぐにチェックイン手続きをし、フロントからカードキーを受け取った。前回のようにいきなり泊まるわけではなく、部屋はすでにとってあるようだ。ふかふかの絨毯の上を歩きながら、エレベーターへ向かう。何やらランギルスの様子が変なのでわたしは口を噤んだ。ランギルスの顔が神妙な面持ちだったからだ。
部屋の前に着くと、ドアの前でランギルスは立ち止まった。しばらく動かなかった。
「……どうしたの?」
わたしは少し待ってから様子を伺った。ランギルスはゆっくりこっちを向く。何かを決意したような顔をして。
「僕らがこの前見た、流れ星のこと覚えているかい?」
「え……?うん、覚えてるよ?」
「僕の願いを叶えるのは……君なんだ、ミライ」
ランギルスの言っている意味が分からなかった。わたしがランギルスの願いを叶える?部屋にも入らずドアの前でそんな話をするなんて、どういうことなんだろう?
疑問符を並べながらランギルスの発言の意味を探っていると、ランギルスは青い瞳でこちらを見た。その瞳はどこか切なげで自信がなさそうに見える。
「……僕のわがままを聞いてほしい」
「?ランギルス?酔ってるの?さっきから言ってる意味が……」
困惑を誤魔化すように髪を触るわたしの手を、ランギルスは掴んだ。その手をドアに置く。
「君がこのドアを開けて」
ランギルスはそう言うと、カードキーをタッチしてドアを解錠した。
「────っ?!」
中へと入った瞬間に、時間が止まった。
部屋の中はたくさんのキャンドルが灯され、ベットの周りにはバルーンが飾られている。ベットの上には赤い薔薇の花びらが散りばめられ、その真ん中には赤い薔薇の大きな花束と小さな箱が置かれていた。
「ラン……ギルス……?」
後ろにいるランギルスの方にゆっくりと振り返る。
「ミライ」
いつものように名前を呼ばれる。けれどまるで初めて呼ばれたときのように心臓が跳ねたのは、呼んだ側のただならぬ緊張が伝わったからだ。
「僕とずっと、いっしょにいてくれないか」
「……え?」
「今度こそ、君のそばにいたい……僕のそばにいて?……結婚してほしいんだ」