C-LOVE-R【ブラッククローバー / R18】
第29章 C-LOVE-R
夜も深くなり、外へと出れば秋らしい肌寒さが出迎える。シャンパンを飲んで火照った体にはこれくらいがちょうどいいと思った。
「ヤミさん、いつでも食べに来てって言ってたね?」
「あぁ、また行こうか」
「フィンラルもいるもんね?」
「兄さんは……関係ないよ」
「ふふ、本当は好きなくせに〜」
わたしたちは笑い合った。どちらからともなく手を繋ぎ、空を見上げた。月は高く明るく、星をかき消して夜空を渡ってゆく。満月だった。雲にかくれ、さらりとまた姿を現す。月明かりは少し心許ないが、お互いの表情を知るには十分な明るさだった。
ランギルスと付き合うことになってから数ヶ月が経ち、平日も休日も時間があれば会っていた。会えなかった長い長い空白の時間を取り戻すかのように。デートのあとは決まって、いつもランギルスの住む港区のタワーマンションに泊まっていた。この先ずっといっしょにいれるとわかっていても、それだけじゃ足りなかった。すぐ隣で愛しい人の体温を感じることができる。それは、すごく奇跡なんだ。
「ランギルス、お誕生日おめでとう。これ、プレゼント!」
わたしは改めて、ランギルスに祝いの言葉をかけた。持っていた紙袋を渡す。
「あぁ、ありがとう」
しばらくすると、ランギルスが呼んだ個人タクシーがわたしたちの前に止まった。タクシーに乗り込むと、ランギルスのマンションとは違う方向に走り出した。今日もいつものように、このままランギルスのマンションに直行するものだと思っていたので、不思議に思った。
「どこに向かってるの?こっちはランギルスのマンションの方じゃな……」
「そんなに早く僕の家に行きたいの?」
ランギルスはくくっと喉を鳴らして、愉しそうに口角を上げた。
「ち、ちが……それは……早くふたりきりになりたいけど……」
「行きたいところがあるんだ」
「今から?」
「あぁ」
「……わかった」
ランギルスがいつも利用している個人タクシーの運転手さんは、わたしたちのやりとりを聞いて微笑んでいる。ランギルスから聞いているのか、行き先をすでに知っているようだった。
タクシーに揺られしばらくして着いたのは、ホテルのエントランスだった。ここはわたしが記憶を取り戻したときに泊まったお台場のグランドニッコー東京だ。