C-LOVE-R【ブラッククローバー / R18】
第29章 C-LOVE-R
着いたのは築地のとあるお店。
高級感漂う外観から店内が少し見えるスリット窓に木綿の上質なのれんがかかっている。築地の中でも少し離れた場所にあるこじんまりとした雰囲気だ。すっかり暗くなった辺りを障子で作られた和風の照明が灯している。のれんの左端には小さく“築地闇寿司”とかかれている。
ランギルスにエスコートされ、どきどきしながらわたしは中に入った。カウンターは桧の一枚板で落ち着いた雰囲気だ。店内には他にお客さんはいないようだ。貸切にでもしたのだろうか。すると、カウンターにいた店主と板前さんがこちらを向いた。
「──っ?!」
そして目が合った瞬間、わたしは言葉を失った。
「おう、きたな。いらっしゃい」
「ランギルス、お疲れ様!ミライちゃん久しぶりだね!」
「ヤ、ヤミ、団長……?へ?え?フィンラルまで……」
直接声をかけられてやっとの思いで声を出せたけれど、目の前で起きていることが信じられなくて、小さく震えてしまう。
どういうことかそこには数年前、あの世界で出会った人たちの顔があった────……
わたしがトリップした世界は魔法が全ての世界だった。“魔法騎士団”という精鋭団が国を守っていたのである。ヤミ団長は魔法騎士団の団長だった人で、トリップしたわたしを雇ってくれた。フィンラルも同じ団の魔法騎士だった。トリップして彷徨っていたわたしをナンパして、ヤミさんに紹介してくれた。そして、ランギルスのお兄さんだった。
「うそ……こんな、え……」
わたしは幻でも見ているのかと思った。ランギルスと出会えただけでも奇跡だというのに、まさかあの世界で関わった人たちがここにいてこのお店を開いているだなんて……まさか、ランギルスとフィンラルはこの世界でも兄弟なのだろうか。
わたしはどういうことかとランギルスの方を見た。
「驚いたでしょう?まさか、と思っただろうけど僕とフィンラルは兄弟だよ。兄さんは同じ時代を生きてた上に、昔の記憶を持ってたんだ。兄さんの団の団長もこうして、この世界を生きていたんだ。僕も最初は驚いたんだけどね……」
「ほ、本当に……」
「ミライちゃん、今度こそ俺の弟のランギルスをよろしくな!」
「フィン……ラル……」
フィンラルはカウンター越しにそう言うと、お寿司を握り始めた。