C-LOVE-R【ブラッククローバー / R18】
第29章 C-LOVE-R
仕事がスムーズに進み、定時に上がることができた。会社のエントランスを出ると、見慣れたシルエットを見つけた。わたしの大好きな人だ。小走りで駆け寄った。
「ランギルス、お疲れ様!」
「お疲れ様、今日は定時なんだね」
「今日は特別な日だから……頑張って仕事早く終わらせたの」
「特別な日?なんのことかわからないね」
「え〜?とぼけないで。お祝いするの楽しみにしてたんだから」
「そう怒らないで、冗談でしょう」
ランギルスはそう言って、目を伏せ少し口角を上げた。うれしさと少しの恥じらいが伝わってきて、わたしも自然と笑顔になった。
どちらからともなく手を繋ぎ、わたしたちは歩き出した。今日はお酒を飲む予定のため、車は出さずにタクシーで行動すると言っていた。横断歩道を渡り、反対車線に止まっていたランギルスの呼んだ個人タクシーに乗る。行き先は伝えてあるようで、わたしたちが乗り込むとタクシーはすぐに走り出した。
「どこに向かってるの?お店は用意するって言ってたけど……」
「都心からは少し離れた場所だよ。黙ってたけど、実は今日君に会わせたい人がいてね」
「えっ……?」
突然の告白に驚いて、ランギルスを見つめた。
「他に誰か来るってこと?」
「あぁ」
「そうだったんだ……」
「嫌なのかい?」
嫌ではないけれど、てっきり今日はランギルスとふたりで会うとばかり思っていたからか、少しがっかりしてしまった。今日はランギルスの誕生日だし、特別な日はふたりきりで過ごすものだと思っていたからだ。そもそも会わせたい人、とは誰なのだろうか。
「嫌じゃないよ……でも会わせたい人って誰?わたしも知ってる人?」
「あぁ、たぶんね」
ランギルスの曖昧な回答に、わたしの頭の中の疑問符はさらに増える。わざわざこんな日に会わせたいだなんて、一体誰なのだろう。やっぱり少し嫌だ、と思ってしまった。特別な日は、ふたりでいたいのに。
あからさまに態度に出てしまったわたしを見て、ランギルスはわたしの手をぎゅっと強く握る。
「まぁ、つけばわかるよ」
対してランギルスはどことなく楽しそうで、わくわくしているようだった。ますます訳がわからなくなり、約束してあるなら仕方がないのでそのままタクシーに揺られた。