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C-LOVE-R【ブラッククローバー / R18】

第29章 C-LOVE-R





夏が過ぎ、秋が訪れた。冷夏が続いたせいか今年は、なんだか時が進むのが早いような気がした。


街を歩けば金木犀の香りが鼻につく。その切ない香りにたまらなくなって、会いたい“誰か”を思い浮かべて胸がいっぱいになる。


空は湖のように静かな青で、吸い込まれそうに遠く開けて見えた。風に吹かれて、秋だ、と思った。薄い雲がどんどん通り過ぎてゆく。



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すっかり秋の空気が流れる東京。気持ちの良い秋晴れだった。歩き慣れた会社までの道のりを歩く。いつもより気分が晴れやかなのは、お気に入りのヒールを履いて歩いているからだろうか。


株式会社Luneとのコラボ企画も無事に終わり、コラボ商品の売り上げは予想を上回った。ひと段落したかと思えば、AWの商品の撮影やSNSでのライブ配信、打ち合わせなどで日々忙しく過ごしている。


「おはようございます」


「おはよう、今日はいつもより気合入ってるね?デート?」


自分のデスクにつくなり、隣の仲の良い先輩にそう言われる。


「あ、まぁそんな感じで……」


仕事が終わったら、ランギルスと会う約束をしている。それも今日はランギルスの誕生日だ。気合を入れないわけがない。彼氏はいると言っているものの、相手がLuneの社長だということは会社の誰にも言っていない。


「羨ましいなぁ……なら、定時で上がれるように頑張ろ!今日は撮影からだよ!」


「はい!ありがとうございます!」


先輩はそう言って、ぽんとわたしの肩を叩くと自分のデスクについた。ここ最近、先輩の香水が鼻につくとなんだか気持ちが悪くなってしまう。自分の香水にも酔うようになったため、今日も大事な日だというのに香水をつけることができなかった。


記憶が戻ったあの日からランギルスと付き合うことになって、頻繁に会っているのに、会えない時間が寂しいと思うのは贅沢だろうか。こうして時を超えて、巡り会えたことだけでも奇跡なのに、わたしはなんて欲張りなのだろう。会えば会うほど、好きになっていく。



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