C-LOVE-R【ブラッククローバー / R18】
第4章 仕事のち恋
「彼の闇が深そうだったから余計に……それに、彼もバーにいるときはローブを羽織ってなかったの……」
「そうだったのね。なら言わなくて正解かも。男って意外とナイーブなのよね〜。あっ、そろそろ王都が見えてきたわ。ほらっ」
王都に着き、箒から降りる。
「はぁ……、怖かった……」
「まずはそのお店を探しましょう!」
すれ違う人々がバネッサのことをじろじろと見ている。王都でこんなに露出をしている女の人は他にいないので、明らかに浮いてしまっていた。だが、バネッサは堂々としている。
「確か……あの日……、路地裏に逃げ込んで……表通りじゃなかったはず……」
バネッサと近くの路地裏に入ってみると、見覚えのある小さなこじんまりとしたバーが見えた。
「バネッサ!!たぶん、あそこ……」
「彼の行きつけのお店かもしれないわね。行けば会えるわよ、きっと。」
「……バネッサは?」
「わたしは表のお店で飲んでるわ。ひとりで帰れないでしょ?行ってきなさい!ほらっ」
「わかった……、ありがとう!行ってくるね!」
バネッサはわたしにグッドサインをして、表通りに出ていった。
彼に会えるかもしれないし、会えないかもしれない。なんだか、胸がドキドキしてしまう。バーの扉の前でただ、立ち尽くしてしまった。扉を開けるのに、こんなに勇気がいるなんて。
意を決して、重い扉を開けた。中に入ると、見覚えのあるバーカウンターにあの日と同じ場所に座る、彼の背中が見えた。
マスターに挨拶をされ、カウンターに座る。とりあえずビールを注文し、樽型のジョッキを出された。彼に何て声をかければいいのかわからなかった。わたしのことを覚えていないかもしれないし、言葉が出てこなかった。出されたビールをぐいっと飲むと、薄めのビールの味がやけに苦く感じた。最初に口を開いたのは、彼だった。
「……僕の邪魔でもしに来たのかい?」
わたしのことを覚えていてくれたんだ、と思った。
「あ、あの……この前はありがとうございました……あのあと、住み込みで雇ってもらえて……、現実世界に帰るまで、とりあえずはなんとかなりそうです……」
「へぇ……それはよかったね。そんなことをわざわざ言いにきたのかい?」
彼は目を合わせてくれなかった。