C-LOVE-R【ブラッククローバー / R18】
第28章 空と月の間※
「僕はふつうの部屋には泊まらないからね」
ランギルスはそう言って、冗談まじりに笑った。
「でもなんかこうしてるとあのときを思い出すね?ふふっ」
「あぁ、そうだね」
王都の宿に泊まったときのことだ。ランギルスが初めてラクエの海岸に連れていってくれて想いを伝えてくれた日。王都の宿も随分と豪華だったが、その雰囲気とこの部屋はどこか似ている。中世ヨーロッパのような雰囲気だからだろうか。
「この部屋、あのときの宿と似てるなぁ。でも本当またこうしてランギルスとふたりでいられるなんて思ってなくて……奇跡だなって……まさか取引先で再会するなんて……」
「……そうだね」
わたしは部屋のベットに座って話しているのだが、ランギルスは窓際に立って外を見ている。近くに来てほしいのに、この距離はなんなのか。部屋が広いがゆえに遠くに感じた。さっきから返事がそっけないし、目を合わせてくれない。どこか様子がおかしい。
「ランギルス……?どうかしたの?」
「別に……なんでもないよ」
「あ、そう……じゃあわたし何か飲もうかな」
そう言って、冷蔵庫にお酒を取りに行く。冷蔵庫内の飲み物は無料だそうで、もちろんお酒もだ。せっかくだから飲もうと、缶ビールをふたつ持ってランギルスの元に行く。ベットの近くのテーブルにひとつ置く。
「置いとくね」
そう言って自分の分のビールをあけた。プシュッという音が静かな部屋に響いた。ごくんと一口飲むと、ランギルスがわたしの目の前にいてわたしのビールを取り上げた。不意に顔が近くなって、どきどきと胸が高鳴る。そしてランギルスはわたしの飲んだビールを一口飲んだ。
「ちょっと……ランギルスの分ならそこに……んっ」
そう言い終わらないうちに唇を塞がれる。ビールがごとんと床に落ちた音がした。さっき公園でしたような優しいキスではなく、情欲を帯びていた。そのままランギルスがわたしをベットに押し倒した。角度を変え何度も口付けられ、わたしもそれに応えた。唇が離れると、わたしを組み敷いているランギルスと目が合った。
「ビールは、もういいでしょう?」
「……うん」
広い静かな部屋にリップ音と荒い吐息が混ざり、溶けていく。優しい掌が髪や体を滑らせ、撫で回される。わたしはランギルスの首に腕を回して、深いキスに応えた。