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C-LOVE-R【ブラッククローバー / R18】

第27章 雨の夜





“真実の愛で繋がる道で異世界に行った者は全ての記憶が抹消される”


ランギルスの世界で聞いた話。


その話を信じたくなかった。だって思い出ごと、彼の存在ごと忘れてしまうのだから。そんなの考えただけで耐えられなかった。記憶を掴んで離さまいと、彼の空間に入ってからその手が離れるまでそう思っていた。


だけど────……


「そういえばミライ、ずっとそのネックレスつけてるよね?新しい彼氏でもできた?」


ある日、親友からそう問われた。


「違う、違う!仕事忙しくてそれどころじゃないよ……」


胸元で小さく揺れる四つ葉のクローバー。


気に入っているし、何故かわからないけれどとても大切なものな気がしていた。でもどうしてこのネックレスを持っているのかは、どう頑張っても思い出せない。


元の世界で目が覚めたとき、思い出は丸ごと、あの世界の記憶ごと跡形もなく消えていた。忘れたことにも気づかないくらい、キレイにさっぱりと。


ある日、終電の終着駅で目が覚めたとき、なぜかわたしは希望に満ちていた。彼氏にフラれたばかりで、落ち込んでいたはず。でも、わたしの心持ちは穏やかだった。誰かに後押しされているような気がした。


それからやりたい仕事を始めて、夢を叶えるために走り続けてきた。落ち込んでいる暇などなかった。振り向かずに、ひたすら前だけを見て。諦めたくなかったから。


その間に彼氏ができたりもしたけれど、長くは続かなかった。どの人も本当に好きじゃなかったのかもしれない。“夢”を持ってから、男の人に依存することもなくなった。何かに縋ることが悪いことではないけれど、それが全てじゃないって誰かが言ってたっけ。誰かを愛して、愛された記憶がわたしの胸に残っていた。


今思えば、本能もしくはそれに近い部分ではずっと憶えていたのかもしれない。


初めて出会った日。紅茶のお店に行ったあの日。


社長という肩書きから自分とは住む世界が違うと思いながらも、彼からの誘いを断らなかった。彼と会う日はお気に入りの洋服を着ていたのも、お気に入りの香水をつけていたのも、彼の気を引きたかったから。自分とは不釣り合いだ、なんて最初から予防線を張ったのは傷つきたくなかっただけ。もっと彼を知りたくて、会いたくて、こんな気持ちになるのは彼を好きだからだ。ずっと前から。



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