C-LOVE-R【ブラッククローバー / R18】
第26章 遥か未来へ─ランギルスside─
〝先ほどはありがとうございました 紅茶とてもおいしかったです〟
ミライからの連絡がきただけで、胸が高鳴る。この僕をこんな風にさせるなんてね……相変わらずだよ、君は。いつだって、君が僕の不安をかき消してくれる。
会社を出ると、先ほどまできれいだった藍色の空も、夜の暗さに変わっていた。満月が雲に包まれて、月がぼんやりと見える。僕の心のようだ。夜なのに、嫌な蒸し暑さを感じる。そういえば、真夜中のニュースで東京が梅雨入りした、と流れていた気がする。
「え〜〜!!ミライちゃんがいた?」
「ちょっと……兄さん声が大きすぎますよ、営業中です」
僕は兄さんにミライと会ったことを話したくなって、兄さんの働いている“闇寿司”に来ていた。
「何?ミライがいた、だと?まじかよ……」
営業中だというのにカウンター越しに僕らの話しに入ってきたのは、店主のヤミ・スケヒロだ。この店主もまた、昔の記憶をもったまま同じ時代を生きていた。昔、クローバー王国で僕の兄さんの所属していた魔法騎士団、黒の暴牛団の団長だった人だ。トリップしてきたミライをナンパした兄さんと、魔力のないミライを黒の暴牛で雇った店主。ミライのことを鮮明に憶えているようだ。
「Soleilの本社勤務?あいつ、限界超えて夢叶えて、生きてんだな」
「俺も大人の女性になったミライちゃんに会いたいな〜」
店主も兄さんも営業中なのにもかかわらず、ミライの話しに夢中になっている。兄さんはまたチャラついた発言をしている。兄さんは昔、ミライに告白していたらしい。この時代で初めてそのことを聞かされ、僕は兄さんにかつてないほどの苛立ちを覚えた。なんで今まで黙ってたんだ……?兄さんのくせに、調子に乗りすぎだね……まぁ、あっさりフラれたらしい。僕のことが好きだと、はっきり言われたと聞いた。
「ふたりともいい加減に仕事してくださいよ……兄さん、またそんなこと言ってたらフィーネスさんが悲しみますよ」
僕がそう言うと、店主も兄さんも笑いながら仕事に戻っていった。この先、ミライの記憶を取り戻すことができたら、この店にも連れていきたい。
もしも戻らないとしても、僕は君にもう一度────……