C-LOVE-R【ブラッククローバー / R18】
第26章 遥か未来へ─ランギルスside─
わかっていたことじゃないか。記憶がなくなることなんて。僕が君を救うために選んだ道だ。初めて誰かを愛した。守りたいと思ったんだ。後悔はないはずだ。なのに、認めたくない自分がいる。ミライは、僕のあげたクローバーのネックレスをつけていた。紅茶の記憶もある。まだ出会って少ししか経っていないし、たいした話しもできていない。連絡先を聞いて、また会う約束をすればいい。そのときに気づくかもしれない。
「あの、ヴォード社長……紅茶ごちそうさまでした。記憶の中の紅茶がテドゥルヌだってわかってよかったです。“月光のお茶”なんて素敵ですね……わざわざ、ありがとうございました。わたしはこれで、失礼します。」
ミライはそう言って、一礼した。僕に背を向け、帰ろうとするミライの腕を掴んだ。彼女は僕の方に振り返り、顔が近くなる。目が合ったまま、沈黙が流れた。彼女の香水だろうか。ふわりとペアーの甘くみずみずしい香りが僕の本能を刺激する。このまま、唇を塞いで僕のものにしてしまいたい。ミライは顔を赤らめ、僕から目を逸らした。
「あ、あの……まだなにか……」
ミライはしどろもどろにそう言った。かわいすぎないか……このまま押し倒してしまいたい。今は衝動を抑える。ミライの腕を離し、気持ちを落ち着かせるように、はぁ、とため息をついた。
「連絡先……教えてくれないか?世界の紅茶が飲めるお店があるんだ。君をそこに連れていきたい、と思ってね」
ミライは少し驚いた顔で僕を見る。
「へ……?わたしなんかでよければ……」
お互いにスマホを取り出し、連絡先を交換した。
「それでは……失礼します。」
ミライはそう言って、部屋から出ていった。僕はミライの前だと余裕がなくなる。昔からそうだった。
連絡先を聞けたのはよかった。だが、ミライには彼氏がいるかもしれない、という不安があった。左手の薬指に指輪はしてなかったし、結婚はしてないだろう。ミライはかわいいし、彼氏がいてもおかしくはない。むしろあの雰囲気は、いる気がしてならない。考えれば考えるほど、ネガティブな思考になっていく。
はぁ、とため息をついた。すると、スマホの画面が光る。画面を見ると、ミライからだ。