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C-LOVE-R【ブラッククローバー / R18】

第26章 遥か未来へ─ランギルスside─





彼女の顔をもう一度見る。僕は名前すら聞いていないというのに、僕は揺るぎない確信をもっていた。やはり彼女はミライだ。彼女の分もテドゥルヌを淹れた。差し出すと、彼女はひと口飲んだ。そのとき、彼女からは一筋の涙が伝った────……


「あ……れ?なんでだろ……すみ、ません……」


やはりミライの中に紅茶の記憶が残されていた。ようやく辿り着けたのか。僕のこの掌をもう一度、君の手のひらに重ねたい。もう二度と離さない。今すぐその華奢な肩を抱き寄せて、僕のものにしたい。だが、今はその衝動をぐっと堪えた。


「君の記憶の中の紅茶は、これかい?」


「あ、えっと……たぶんそうなんだと思います……でも、それだけなんです……それ以外何もわからなくて……」


僕の問いに、彼女は悲しい顔でそう答えた。僕はそうか、とだけしか言葉が出てこなかった。





────彼女は、過去の記憶を失っていた。


──クローバー王国の海底神殿の伝説。ラクエの海で満月の夜24時に、真実の愛で結ばれた者が異世界に繋がる道への空間をつくることができる。その道で異世界に行った者は、その世界の記憶が抹消される──


古い記憶が呼び起こされる。


「ランギルスとの記憶がなくなるなら、わたし、帰りたくない、な……」


あの日、そう言っていた君の顔を思い出す。





僕のことを憶えてくれているかもしれない、という淡い期待はバラバラと音を立てて崩れ落ちていくようだった。僕の冷たい掌を握ってくれていた、骨張った小さな手のひら。僕のことを想って、涙を流す顔も。僕のものだった。本当の僕をわかってくれた。僕は何百年も忘れなかったんだ。君はやはり、忘れているのか……?紅茶の香りだけが僕らふたりを繋ぐ、唯一の道しるべ、なのか。


初めて君に会えた日も、君と別れた日も、満月だった。今日も、満月だ。運命の引き合わせだと信じたかったんだ。僕はテドゥルヌの意味を君に話した。“月光のお茶”だと。僕の好きな紅茶だと。そして、名刺を差し出し、自分の名を口にした。彼女は立ち上がり、名刺を受け取った。


「わたしは株式会社Soleilの遥日ミライです。日本語流暢ですね?」


彼女はそう言って、僕に名刺を差し出した。彼女の口から直接名を聞くと、一気に感情が込み上げ胸が苦しくなった。



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