C-LOVE-R【ブラッククローバー / R18】
第26章 遥か未来へ─ランギルスside─
見間違いだろうか……?いや、違う。忘れもしない。素直になれない僕が、傷つけることでしか君を愛せなかった僕が、想いをかたちにするために贈った“クローバー”と瓜二つだ。四つ葉のクローバーは“真実の愛”を意味する。見えないものが確かにあることを、本当の僕のことを、信じてほしかった。僕らに“真実の愛”があるという証を。忘れもしない、あの日。僕は君の手を離すことを決めたときだ。君を救うために────……
やはり直感は間違っていなかった。そう思い、彼女の腕を掴む手にぐっと力が入る。あの日、僕が離した君の手を。
「あ、あの……どうしたんですか?」
彼女はそう言って、心配そうに僕の顔を見ている。確信をもつと、もうそうだ、としか思えなくなる。冷静を努めたいが、僕はいてもたってもいられず、聞いてしまった。首元のネックレスのことを。彼女は少し驚いた表情をした。
「へ……?これは……」
彼女がそう言いかけたとき、それを遮るように僕のスマホが鳴った。仕事の電話だろう。一刻も早く、答えを聞きたい。君を目の前にして、君がミライだと確信もった瞬間から、逸る気持ちを抑えられなくなっていた。鳴り止まないスマホの音が頭に響き、ようやく冷静になる。彼女の腕を離し、逸る気持ちを落ち着かせるように、はぁ、とため息をついた。僕も彼女も、今はお互いに仕事に戻らなくてはならない。だが、彼女を引き止めなくてはならない。そう思い、話しがしたい、ともちかけ、帰りに社長室に来るように、と言った。
それから僕は仕事が手につかなかった。いきなり取引先の会社の社長に話しがあると言われても、わけがわからないだろう。そんな理由で本当に来てくれるのだろうか、と不安になる。窓の外を見ると、空が藍色に染まっている。東の空から満月が昇っているのが見えたが、ビルの明かりにかき消されてしまいそうだ。
そろそろ打ち合わせが終わる頃だろうか。僕はいてもたってもいられず、心を落ち着かせるためにテドゥルヌを淹れた。ふわりと香る。あの日の記憶を、あの日の君を、あの時代のことを、僕は鮮明に憶えている。僕のことは、名前を言えば思い出してくれるだろうか。それともテドゥルヌを飲めば……期待と不安が入り混じる。
しばらくすると、扉をノックする音がした。僕は深呼吸をしてから、彼女を部屋に招き入れた。