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C-LOVE-R【ブラッククローバー / R18】

第26章 遥か未来へ─ランギルスside─





「天気予報をお伝えします。今日の東京は晴れる見込みです。今夜遅くには満月が見られるでしょう。」


僕は眠れずにテレビをつけたら、天気予報が流れていた。僕は毎日、月を見ていた。東京の真ん中で、雑踏の中で。君を想いながら、幾度も空を見上げてきた。満月の日になら、どこかで君に会える気がしていたんだ。だが、僕はもう何度目の満月を見ただろうか。そう思うと悲しくなったんだ。


────今日も変わらない毎日だ。TAG Heuerの時計をつけ、愛車のRange Roverに乗って、出社する。ファッション業界で有名な株式会社soleilの社長とは付き合いがあり、今回soleilが展開するレディースブランドとのコラボ企画の商品をつくることになった。soleilの社員がうちの会社に来て、打ち合わせをする予定だ。僕自身、今回コラボするブランドの洋服が好きだ。きれいめな印象でありながらフェミニンさもありバランスが取れたデザインが魅力だと思う。


僕は仕事をひと段落終えて、紅茶を淹れていた。昔も今もお気に入りの紅茶、テドゥルヌだ。いろんな銘柄の紅茶を飲んでいるが、この紅茶はフルーティーではなくオリエンタルで香りも強い。後味はすっきりしているが、鼻に抜けていく香りが深くてどこか切ない。


僕がこの紅茶に出会ったのは、昔クローバー王国の城下町キッカでミライと行ったアフターヌーンティーの店だった。初めて飲んだとき、他とは違う珍しい香りが気に入ったんだ。月光のお茶という意味だと知り、この紅茶を飲むと、すぐそこにミライがいる気がしていた。だから僕はミライがいなくなったあと、ひとりでその店に頻繁に通っていた。


僕は今も紅茶が好きなのは変わらない。この時代にも同じ銘柄の紅茶はあるのだろうか、そう思い、探していた。ある日、都内の紅茶の店を見つけた。100種類以上の世界の紅茶があるという。僕はそこで“THE DE LUNE”という同じ名の紅茶を見つけた。頼んで飲んでみると、僕の記憶の中の香りと味も同じだった。それからはそこの店で茶葉をよく買うようになった。満月の日は必ずこのテドゥルヌを飲んでいる。


紅茶を淹れていると、社長室の外から気配がした。ヒールの音だ。カツカツ、とゆっくりとこちらへ近づいてくる音。社長室に何の用だろうか、と思い、僕は自ら外へ出た。



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