C-LOVE-R【ブラッククローバー / R18】
第26章 遥か未来へ─ランギルスside─
僕が社長に着任してから、一層女が寄ってくることが増えた。ファッション事業を展開する会社なだけあってファッション雑誌との取引やアパレル会社との取引も多く、仕事上でモデルや芸能人と関わることもあったし、付き合いや接待で銀座や六本木の夜の店にも行くことも多かった。僕の肩書きに言い寄ってくる女たちに嫌気がさしていた。
美意識が高く、確かに美しい。努力して磨き上げたプロポーションは誰が見ても、美しいと言うだろう。だが、中身が空っぽなんだ。外見にばかり気を取られ、外見だけで世の中を渡ることができる美しさを持っているばかりに、中身がない女ばかりだった。僕の車がRange Roverだとか、つけている時計はTAG Heuerだとか、そういう女は僕の外見や肩書きばかりを気にして、中身なんて全く見ていない。見ていないというよりも、興味がないのだろう。
ありのままの僕を、かっこわるい僕を、好きだと言ってくれた君を僕は探し続けていた。ずっと、ずっと。それにミライはかわいい。本人には恥ずかしくて言いたくないが、僕に従順な部分もあるし、どうしようもない僕を包み込んでくれる包容力もある。僕にはミライしかいないんだ。だから僕は言い寄られるたびに断り続けていた。君を必ず見つけ出す、と行く先々で目を凝らして。
ある日、仕事終わりに兄さんが板前修行をしている寿司屋に行った。激戦区築地の中でも人気のある店、“闇寿司”だ。漁師である店主が自ら朝獲った魚を使っているという。店内に入ると、カウンターは桧の一枚板で落ち着いた雰囲気だ。
「おう、いらっしゃい」
「ランギルス、お疲れ!兄ちゃんに会いに来てくれたんだ!」
店主と兄さんが僕に声をかけた。カウンターに座り、寿司と日本酒を頼んだ。
「ランギルスさん、どうぞ」
そう言って、日本酒を持ってきたのは兄さんの婚約者のフィーネスさんだ。ここの若女将として働いている。フィーネスさんも昔の記憶を持ったまま同じ時代を生きていた。この世界でも兄さんとフィーネスさんは巡り会うことができた。
帰り際に兄さんが僕に耳打ちした。
「ランギルス……お前まだミライちゃんのこと……探してるのか?」
「兄さんには関係ありませんよ、ごちそうさまでした」
僕はそう言って、店を後にした。