C-LOVE-R【ブラッククローバー / R18】
第26章 遥か未来へ─ランギルスside─
あれからどのくらいの月日が経っただろうか。僕は何百年も彷徨い続けた。行く先々で君の面影を探して。そして、ようやく辿り着いたのがこの世界だった。君がいる世界に一度だけ行ったことがあった。初めてラクエで僕の空間が君の世界に繋がったときだ。そのときの感覚や空気を覚えていた。この地に足を踏み入れるのは、初めてではないと思った。君はきっと、この世界のどこかに────……
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「ランギルス、お前に時期社長を頼んだぞ」
社長である父さんにそう言われたのはつい最近のことだった。ファッション事業を展開する株式会社Luneを経営する父さんは、僕ら兄弟のどちらかに会社を継がせようとしていた。僕らが20代のうちに社長の座を降りて、世代交代をすると決めていたようだ。
もちろんその兄さんは、あのフィンラルだ。驚くことにまた兄弟として同じ時代を生きている上に、お互いに昔の記憶を持っていたのだ。兄さんも僕も大学卒業後は父さんの会社で働いていた。当初はもちろん長男である兄さんが会社を継ぐ予定だった。
この世界には魔法なんてものは存在しないし、国同士の争いもなく平和だった。兄さんとも和解していたし、随分と仲良くなったと思う。僕にしてはね……兄さんは仕事もできるし、それなりに認めてはいる。
兄さんはある日、僕を呼んだ。いつもチャラついた兄さんが改まって話しをするなんて、なんだか気持ちが悪い、と思いながらも渋々話しを聞くことにした。そう、兄さんはこの世界でも相変わらず呪われていた。女たらし、だった。
「ランギルス、俺……やりたいことがあるんだ」
「兄さんのやりたいことってなんです?」
「知り合いのところの寿司屋に弟子入りしたいんだ。板前修行をしていつかは自分の店を持ちたい。でも俺は長男だから、会社を継がなきゃならないだろ?」
「仕方ないですね……なら、僕が継ぎましょうか。兄さんのくせに夢を追うなんて生意気ですよ」
「ランギルス……いいのか?お前、随分変わったな……」
「調子に乗らないでくださいね……仕方なく、ですから」
兄さんは父さんに頭を下げて家を出て、築地のとある寿司屋に弟子入りすることになった。その寿司屋の店主は僕も知っている人だ。こうして僕が会社を継ぐことになった。