C-LOVE-R【ブラッククローバー / R18】
第26章 遥か未来へ─ランギルスside─
僕はひとりでラクエの海に取り残された。まるで君は幻だったかのように、僕はまたひとりになった。僕は夢を見ていたのか?そんな錯覚さえ覚えた。君はあの月に拐われたんじゃないか、そんな風に思ってしまうくらいに僕は空虚感に襲われた。
────僕の夢は現実になった。
僕はエルフに転生した。ロイヤルナイツ選抜試験では兄さんを殺めかけ、暴牛のアスタに倒された。父さんと母さんにその弁明をさせている最中に、自国の王を殺めようとした。
だが、ミライ、君の言うとおりだったよ。僕はひとりなんかじゃなかった。兄さんが僕を救ってくれたんだ────……
「こっちこい!!ランギルス!!」
兄さんはそう言って手を伸ばし、僕の手を掴んだんだ。ひとりぼっちの僕に、その優しい手のひらを、僕の、この僕の掌に重ねたんだ。温かかった。君みたいに、ありのままの僕をわかってくれたんだ。兄さんはずっと、僕を気にかけていてくれた。僕は素直になれなくて、バカにしていたのに。
僕は兄さんと仲直りした、つもりだ。金色の副団長の座を降りて、僕は旅に出た。君が現実世界に帰る前に僕にくれたお守りを、大事にずっとつけたまま────……
ミライ、君は今、どこで何をしているだろうか。夜が明ければ陽が昇る。道は永遠に続いている。僕らは今を、生きている。それと同じくらいに君にいつか会えると、今も信じていることを君は笑うだろうか。
この国境を越え、海を渡り、僕の空間魔法を使って、君を探しにいく旅に出たいんだ。だが、それはもう少し先になりそうだった。
僕はまだやるべきことがある。それはクローバー王国の平和だ。国同士の争いがまだ終わっていないんだ。僕は“金色の夜明け団”をやめたわけではなかった。君がいなくなってから、たくさんのことがあった。それでも前を向けたのは、君がいつでもそばにいてくれるような気がしたからだろうか。
ミライ、君は僕のことを今でも憶えていてくれているかい?本当の僕のことを、忘れないでいてくれているかい?
僕は片時も忘れたことなどなかった。君の顔も、君がありのままの僕を愛してくれていたことも。世界は変わっていく、だが僕には変わらない想いがひとつある。僕は今でも君のことが好きだ。フローライトが輝いて見えるのは、君が大切だという何よりの証だった。
