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C-LOVE-R【ブラッククローバー / R18】

第22章 君と僕─ランギルスside─





「……ランギルス?落ち着いた?」


ミライは何も喋らない僕に心配そうに問いかける。


「……あぁ、考えてたんだ」


僕はベッドを降りて、窓の外を見た。夢で見た月とは反対の右半分が輝いている。上弦の月だ。上弦の月のあと、およそ7日で満月になり、満月から欠けていき、左半分の月になる。それが下弦の月だ。となると、夢の中の月は下弦の月だ。今日が上弦の月なら、次の下弦の月の前に満月になる。その満月で必ずミライを送れば、ミライを救うことができるはずだ。


こんなに早く別れを選ばなければならなくなるなんて思ってもいなかった。だが、もう、選ばなければならないんだ。明日から拘束される僕は、次の満月までミライに会える日なんてないだろう。別れの日までそばにいることさえ、許されないんだ。


気がついたら、僕は泣いていた。頰を冷たい涙が伝っていく。切なくて胸が苦しいんだ。別れを選ばなければならないのなら、なぜ僕らは出会ったのだろうか。なぜ君は僕を愛してくれたのだろうか。なぜ僕は君を愛してしまったのだろうか。こんなに苦しくなるのなら、ミライ、君に出会わなければよかった。いや、出会わなければ僕は変われないままだった。こんな僕を、ミライは受け止めてくれたんだ。ありのままで生きてていいって、そう思えたんだ。


ミライの体温を背中に感じた。ミライは僕の腰に腕を回し、何も言わずにふわっと後ろから抱きしめてくれていた。ミライのことを他の誰かの方が幸せにできる。そう思ったはずだった。少しだけわがままを言っても、許してくれるかい?


「……ミライ」


「……ん?」


「次の満月の日、君を迎えに行くよ。君は、現実世界に戻るんだ。僕は君を守るために、君との別れを選んだんだ。君の幸せを願っても、僕のことを忘れてほしくない……記憶が抹消されるとしても、僕のことを覚えていてほしいなんて、虫がよすぎるね……」


月明かりだけが差し込む暗い部屋で、沈黙が流れた。ミライの腕の力がぎゅっと強くなった気がした。夜も更けて、この部屋は肌寒いのに、僕らの体温だけは温かかった。


初めて、人を好きになった。初めて、人に愛された。初めて、人に涙を見せた。だから、僕は僕だって、認めることができたんだ。



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