C-LOVE-R【ブラッククローバー / R18】
第21章 真実の愛※
「ランギルスの凶々しい魔力でフィンラルのチームのクリスタルを破壊した。フィンラルは体中穴だらけで瀕死状態になって…… それを見ても、ランギルスはとどめを刺そうとしていたの……」
「僕はところどころ記憶が曖昧なんだ……兄さんと試合をしたことは覚えている、兄さんと同じ団のアスタと戦って負けたことも……憎悪の感情はあったが、僕は兄さんも君のことも、殺したくなんて、ない……僕は心のどこかで兄さんのように優しくなりたいんだ、君みたいに、」
「わかってる……わかってるよ、ランギルスの身に何が起きてるかはわからないけど、ランギルスの本当の気持ちはフィンラルもわたしもわかってる……だから、試合のことを言いたくなかったの……ランギルスが無事ならそれでいい、と思ったから」
「……そうか、僕が試合でそんな失態をしていたってことは、退院したら騎士団本部で拘束されて、尋問されるだろうね……金色には戻れないでしょう?そんな僕じゃ」
ランギルスは切なげな声でそう言うと、病室に向かってまた歩き始めた。わたしは黙ってランギルスの後ろを歩いた。ランギルスの気持ちを考えると、何も言葉を紡げなかった。
病室に入ると、ランギルスは着替えを取り、シャワーを浴びてくる、と言って出ていった。独特の薬品の匂いがする静かな部屋にひとり残された。窓から差し込む光は月明かりだけしかなく、部屋が暗かった。暗闇に吸い込まれてしまいそうで怖くなり、オイルランプに火を灯した。ゆらゆらと揺れる光を見つめながら、心を落ち着かせた。
しばらくすると、ランギルスが戻ってきて、入れ替わりでシャワーを浴びにいく。鏡越しにうつる、首元のクローバーのネックレスを見て、さっきまでの楽しくて幸せだった時間を思い出した。現実はそうもいかなかった。ランギルスの身に起きている不可解なことやブラックマーケットであの占い師に言われたこと。繋がっているのだろうか。占いはただの占い、ランギルスもそう言ってたのに、どこか引っかかる。ランギルスに、この国に、何かが起こる、それは嘘ではない気がした。考えたくない、そう思った。その感情を洗い流すかのように、シャワーを浴びた。
ランギルスと異世界に逃げたとして、ランギルスは救われるのだろうか。何が正しいのか、間違いなのか、わからなかった。幸せな時間を過ごしたいだけなのに────……